『関ジャム 完全燃SHOW』 モーニング娘。'15があたたかく迎えられたことに感謝
先日の『関ジャム 完全燃SHOW』(2015.10.25放送)にモーニング娘。'15がゲスト出演し、トークに舞台裏映像にスタジオライブにと、見どころたっぷりな内容が見られました。
2年前の「寝起きドッキリ」と並ぶほどのインパクトであり、あの日感じた『What is LOVE?』の良さを再確認させられた気がしています。
何より、テーマが明確でしたね。
村上「なかなか全員のねえ、名前をフルネームでとかってなってくると、オジサンちょっとキツいですよねえ?」
古田「いや、道重さん…が辞めてから…は分からない。」
ちょっと歯切れの悪い古田新太さん。それはそうでしょう、CMで共演してるので「分からない」と真正面から言うのは気まずかったはず…(^_^;)
でも、今回の趣旨を伝えるための導入として必要な一言でした。
「道重が卒業したらもう誰も分からない」
娘。のテレビ出演時に必ずTwitterに出現するそんな「世間の声」を見かける度にファンが凹むというのが通例だったわけですが、今回はその現象を逆手にとった企画。
つまり、もう開き直って、知られてないなら知ってもらおうじゃないか、という「初心者向けモー娘。ガイド」的な内容になっており、とても貴重な機会であったと思います。
村上「昨日マツコと一緒やったんですけど、『お世話になります』ってマツコが言うてました。」
お世話になります。(石田拝)
※この後、ジャニーズさんに関して、テレビから得た程度の断片的な知識であれこれ書きます。おかしなところがあるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。
トークパート
さすがおしゃべり上手な関ジャニさんだけあって、バラエティでの振る舞いは娘。と比べて大人と子ども。彼ら自身のチームワークで、トークの「形式」が違う感じがしました。
一緒にコントを作っていく
大抵の歌番組では「MC→娘。」の質問形式になりますが、この番組は「複数×複数」による即興コントのように見えました。
例えば、村上くんが関ジャニ年下組に「なんでタメ口なん!?」と切り出してわちゃわちゃ言い合うくだりは正に即興コント。あれで場が温まって、参加しやすい雰囲気が出来ました。そこで石田が質問すると、それをフリに大倉くんがオチをつけたり、横山くんの「貫禄あるよなあ」という明らかなフリに対して鈴木が立ち上がって笑いが起きたり、一緒にショートコントを作るようなイメージです。「一発芸があるんですって?」「ルールが厳しいんだそうで」という質問形式ではないのですよね。
※具体的なやりとりは、サブエントリーにいくつか書き出してみました。
そうやってトークのパスをどんどんゲストに回します。「大人と子ども」って表現しましたが、共演者をコントに招き入れるエスコート役に見えました。
『関ジャニ∞クロニクル』でも、即興で暗黙のルールを作る感じがうかがえます。お題だけ用意された場を面白く変えて、例えば三度ぶつけをエンタメ化してしまう、そんなバラエティの「セッション」が好きな人たちだと思うんですが、彼らの雰囲気作りのワザにノせてもらって、スムーズに楽しい流れが作られていました。
バラエティの「フォーメーション」
一方、娘。はというと、終始上下関係の話でキャラが見分けやすい状況で、最近テレビに出ると説明役をつとめることが多い飯窪・石田・工藤・小田らが、生田をイジったり鈴木の抑え役になったりといった形で連携していました。
喩えれば、生田・鈴木が「師匠」のようなキャラに昇華され、後輩にイジられるダチョウの竜ちゃんとか、食ロケで突っ走るホンジャマカの石ちゃんに同行する女子アナが翻弄される、みたいな構図に似てて面白かったです(笑)
ボケとツッコミのように、「面白い」キャラの生田・鈴木に対して10期11期が「上手い」キャラとして絡んでいくポジションを確保して、「リーダー」譜久村と「エース」鞘師は真面目な受け答えでバランスをとって、残る「パルプンテ」キャラである佐藤が記憶に残る一打を放って打者一巡した格好。
これが娘。'15のバラエティでの「フォーメーション」と言えるでしょう。
序盤のぽっちゃりイジリの時点で中居くんのキラーパスを思い出したんですが、あれから2年近くが経ってるんですね~。
今回大きな出番は無かったものの、この連携を12期が目の当たりにしたのは収穫だったのではないでしょうか。
歌収録で共同作業した後だったし、『J-MELO』のMay J.さんや『MUSIC JAPAN』で12期がお世話になったクリス・ハートさんも一緒で、かなりリラックスした雰囲気の中、同じアイドルの立場で一緒にコントを作っていく様子は、見て面白く本人たちも楽しそうで、とても新鮮でした。
反省会
正直そんな厳しかったかな?という印象です。「反省会」というより「確認会」 という感じ。
この部分はスタジオでのやりとりが無かったんですけど、ジャニーズの反省会(どうやっているか分からないですが)は、もっと厳しいんじゃないかと思います。
中居くんが語る合宿所時代の体育会ノリな話や、以前『ひみつの嵐ちゃん』にゲスト出演したPerfumeが語った「松潤=ストイック」というエピソード *1 などを聞いて、わたしの中で、それらがジャニーズさんたちの基準になっています。
この反省会、収録したのは取材したディレクターさんがツイートしていた10月11日の高松公演の日で、メンバーのブログを見るとスタジオ収録はその5日後だったようです。
モー娘さんの密着ロケで高松に来ました。 https://t.co/PK3gXk1mjW
— 芦田太郎 (@taroashida) 2015, 10月 11
なので、たぶんスタジオ収録の時点で映像が用意されてて、進行の安田くんが「映像あります」って言ってなんやかんやトークしたんだけど、さほど盛り上がらなかったのでオンエアが無かったのかなあと思いました。
で、おそらくカットされた中で話題に出たまーちゃんが何かやらかして、それがあったことで、その後の歌紹介の前に話そうとした時に大倉くんが「喋って大丈夫?」って笑ってたんですよね、きっと(笑)
「小っちゃいよ、声が」
放送前から鞘師が怖いと評判でしたが、実際に見たらそれほどではなかったですね。なぜなら、相手がまーちゃんだから。
面倒を見る/見られるを続けてかれこれ4年以上じゃないですか。佐藤母がまーちゃんのiPadのアプリ購入パスを鞘師にだけ教えているというのは、二人が中学生だった頃に話題になったエピソードです(預けられたのは小学生までさかのぼるかも)。
なので、「この姉妹は遠慮がないねぇ」という微笑ましい場面が垣間見られた感じ。
関ジャム見てモー娘とか鞘師怖いって思った人に見せたい動画 pic.twitter.com/pcCnGEmP1T
— まる'15 (@ma_do0901) 2015, 10月 25
鞘師の「小っちゃいよ、声が」も石田の「返事は?」も、「12期に示しがつかないでしょ!」という意味合いかなあと思いました。アドバイスに逐一返事する娘。の文化は昔から時折見かけるので、決め事は守らなければいけないという指摘のような気がします。*2
この後のテロップで説明されている通り、まーちゃん以上に12期に沢山指導があったはずで、VTRに入ってないこっちのほうが引くほど怖かったりするかも。。
とはいえ、石田の注意を振り返って欲しいんですけど、事実をあげた上で「気づけるようになろうよ」「そういうの言われると悔しくない?」と疑問形・勧誘形で問いかけています。自ら考えることを促していて、適切なコーチングだったんじゃないですかね。言い方キツい子ではありますけれども(笑)
そういった背景を想像するに、見れば見るほど「反省会」ではなく「確認会」でした。
スタジオライブ
CM明け、「踊ってたねえ~ おっさん二人!」「俺、涙出そうやったわ(笑)」と嬉しそうな古田新太。彼も怪我と隣り合わせのアクションをこなす劇団の人間です。もちろん番組全体的にリップ・サービスはあったと思うんですが、「新感線」座長のこの感想には説得力がありました。
このコラボ、村上くんと安田くんの真剣な表情が映像の魅力のスパイスになっていたと思うんですよね。歯を食いしばる男性の表情に迫力が増しました。
歌披露前の確認の様子がミニドキュメンタリー的に映し出され、村上くんの口から「難しい」「細かい」「複雑」と言葉が出るにつれて緊張感が高まり、スタジオライブの映像に集中できる状況が整っていきます。
※フォーメーションダンスの生みの親であるYOSHIKO先生が指導。
そうして始まったスタジオライブですが、ほどなくして、この番組の一番の魅力はココなのだと思いました。早い段階で「既視感」を覚えたんです。
作り手のワザ
そもそも、少し戻ってトークパートの中で、見ていて最初に「おっ」と思ったのは、この場面でした。
【モー娘。'15MEMO リバウンドで貫禄も?】
「ぽっちゃり」じゃなくて「リバウンド」なんですよね。
今年の彼女の身に起きた「ぽっちゃりキャラ→ダイエット成功→リバウンド」という出来事をおさえているんですよね。ちゃんとリサーチしてる…って思いました。
また、エピソード紹介もプレゼンの順序が考慮されてます。普通の音楽番組の対応は、だいたいこんな段取りでしょう。
OP「本日のゲストは○○さんでーす」
↓
紹介VTR「まずはこちらのVTR見てみましょう」
↓
トーク(VTRを踏まえてエピソードを訊かれる)
↓
曲紹介「それでは歌っていただきましょう」
だけど、この番組はそうではなくて、「お弁当の話→お弁当の観察VTR」「歌割りの話→ライブ映像→更にトーク」といった具合で、分かりやすく飽きさせない工夫がなされているんですよね。
この画像も実は地味に効果アリ。
加入期ごとに分けることで、13人横一線よりもかなり憶えやすくなります(わたし個人的に、Kis-My-Ft2の顔と名前が一致できた決め手は、舞祭組が出来たことでした)。
細かいところでは、香音ちゃんのぽっちゃりイジリで立ち上がる時の「ど~ん」という効果音とか、「カツ丼♡」「あ い し て る」と映像でもオチを強調したり、登場人物やスタジオライブの見所を示すテロップも親切です。
上下関係がテーマなので、必ず加入期で関係性を補足します。
いかにも今どきのバラエティっぽい過剰テロップとも言えますが、出来る限り知らない人に伝えようという工夫は有り難かったですね。そもそも冒頭の古田新太の一言は視聴者の気持ちを代弁させる演出です。お茶の間と情報共有する意識から、映像も自ずと情報に細かくなるんです。
名前のテロップに加入期・年齢・紹介文を加えている点が親切だと思ったんですが、
ここで思い出したのは、今よりもっと知られてない状態で出演した『めちゃイケ』。リサーチしてキャッチフレーズを考えてテロップに入れてくれて、とても有り難いって思いました。ああいうセンスなんですよね。
「お笑い大好き健康優良娘。」って抜群のキャッチフレーズ!きっと香音ちゃん喜んでるし、われわれ香音ファンもうれしい。 pic.twitter.com/jSnOFxVnsQ
— もかまっちゃ (@_mochamacha_) 2013, 12月 7
そして、極めつけが「既視感」を覚えたスタジオライブです。
※ソロパートは確実におさえる。
※一体感のある部分は引きの画
※どなりの場面でドアップ
※娘。フォーメーションダンスの華である俯瞰映像(ハートを補正した村上くんに唸らされる)
映像のアップ、引き、寄り、俯瞰が的確で、マイクもバランスよく聴こえ、更には村上くんと安田くんが万全の準備で臨んでいた(鞘師がこの前日のラジオで話していました。参考:【書き起こし】『ヤングタウン土曜日』関ジャニの村上くん安田くんのフォーメーションダンスの準備が完璧だった話 )ので、きれいな15人のフォーメーションが存分に楽しめました。
これらを見ていて「あぁ~Mステっぽいなぁ…」って、ふわ~っと頭に浮かんだんです。*3
こういった仕事をちゃんと出来るとなると、もう本職の人しかいないだろうとスタッフロールに注目したら、驚くほど大御所揃いでした。
『関ジャム』、ビックリするぐらいイイ番組だと思ってたら、『Mステ』の一番エラいプロデューサーが手がけてて、演出は『ロンハー』の名物ディレクターだった。だからスタジオライブはMステ風味だし、テロップは分かりやすく面白かったんだ。なんと贅沢な番組。。
— もかまっちゃ (@_mochamacha_) 2015, 10月 25
一番エラいプロデューサーとは、この方。
※そういえば以前の共演時に歌う前に「がんばれ~」って声かけてくれたのも関ジャニさんでしたね。
『ミュージックステーション』のEP、GPが名を連ねているんですね。30年前のMステ開始当初から携わるテレ朝音楽制作のトップの人なのだそう。技術ディレクターやカメラも全員Mステの人でした。
更には、高松で取材したとツイートした芦田Dも、元々『関ジャニの仕分け∞』の担当だったところからこの番組開始のタイミングでMステも担当するようになったのだとか。
何か段々と話がつながっていく感じがします。。
見終えて分かった番組趣旨
番組の見どころ
ほんとに何も知らない状態で見ていたんですが、『関ジャニ∞の仕分け』の後継で「音楽もやるバラエティ番組」なのかと勝手に思っていたら、実体は「バラエティもやる音楽番組」という枠組みに見えました。何が違うかと言えば、音楽のセッションが番組の見どころになっているのですよね。
だから、トークもその【見どころ】ありきだったのかなあと考えました。もちろん会話自体楽しかったですが、歌ダンスに注目させる目的があって、「モー娘。は決め事に厳しいです」→「こんな子たちとのコラボに注目です」と促す流れだったとすれば、ユルいモノマネや一発芸ではなく彼女たち自身にクローズアップしたのも合点がいきます(そう考えると以前のエビ中の回がどうだったか気になります。たぶん個性や楽しさを伝えたんじゃないかな…)。
で、その見どころに沸点を持っていくため、演出兼プロデューサーに『ロンドンハーツ』のディレクターを招聘しています。テロップの丁寧さはこの方のワザなのでしょう。
※自らドッキリの仕掛け人も務めるほどの中心的なディレクターです。
スタジオライブを聴く前の導入の流れを作るプロセスとして、決め事に厳しいという特徴をバラエティタッチで分かりやすく紹介していたわけです。
※お弁当選びを観察する場面、イラストとか定点カメラ映像とか、よくよく見るとロンハーの密着企画にありそうな構図だったと、後から気付かされる。
ロンハーDがゲスト紹介のプレゼン役を果たし、スタジオライブはMステの技術屋が担当し、すべては音楽を魅力的に見せるという最終ゴールのために各々のノウハウが発揮されていたのでは……そう考えると実に唸らされます。
番組の趣旨
では、なぜそこまでするかと言えば、すべては音楽を楽しんでもらいたいっていう、そもそもの番組自体の企画趣旨や、引いては局の方針があるんじゃないかと思っています。
半年前、テレビ朝日の広報番組『はい!テレビ朝日です』で、「テレビと音楽」というお題で『musicるTV』を紹介し、学生さんでありながら番組企画を通じて℃-ute楽曲の作曲を行ったKOUGAさんの自宅を取材していました。アマチュアでも比較的簡単に楽曲制作の環境が整う昨今、視聴者参加型という新しい取り組みを伝えていたんですよね。
/『はい!テレビ朝日です』(2015.03.21放送)
合わせて、今のテレビの音楽番組の役割を、生で多くの人が共有できることだと再確認していました。これは先日のMステ10時間SPにつながっていたように思います。
老若男女の万人が親しめる楽曲って『世界に一つだけの花』あたりが最後かなあという気がします(モノマネ番組なんかを見ていて、ざっくりと)。以降、急速に個々がネットで楽しむようになり、音楽番組が翌日学校で話題になることも無くなりました。
そんな中で、あらためて局の音楽番組制作班として、音楽を共有する楽しみを伝えたいのではないかと。
ふと、フジテレビ「音組」のきくち伸さんを思い出しました。生歌にこだわった彼はCS放送に移りますが、『スカパー音楽祭』『あたしの音楽』などで制作趣旨を貫いています。『関ジャム』も、職人を集めたプロジェクト体制を組むからには、そんな一本芯の通った番組づくりをしたいと思うんですよね。
個人的には演者で完結する番組が好きなので『新・堂本兄弟』のような構成でいいんじゃない?って思うんですが、「歌ってみた」「踊ってみた」の時代、同じ地上波の日曜日のいい時間帯に、幅広い層(とりわけ若い層)と楽しさを共有すべく、受動的に音楽を聴くだけでなく、能動的に音楽に触れる動機づけ(例えば「ヒトカラ行ってみようかな」とか)をしたいのかなあとか、そのための入り口として関ジャニの存在やロンハーの見せ方を用意してるのかなあとか、目的実現のための試行錯誤の途中であるようにお見受けしました。
(と、ここまで書いてその後の放送を見ると、ちょっと違うかもなぁと思うところもありますが、それは機会があれば別のところに書きたいと思います。とりあえずさわりを注釈に→ *4 )
そういった目論見で番組づくりをして大きく成功するようであれば、いつの日かタモさんがMステを勇退する時、もしかしたら次のMCは村上くんかも……(?)。体制を見る限り、そんな可能性もあり得ないとは言い切れないと思うんですよね。
上に貼った、大御所揃いだと紹介したツイートは思いのほか沢山RTいただきました。「そんなに良い?」という声も聞かれたんですけど、そういった次世代の音楽番組につながるかもしれないと思って、ちょっと大仰なつぶやきになりました。
番組の成果
そういった趣旨があるからこその成果があったと思っています。今回の出演で何より嬉しかったのは、企画を通じて曲や歌詞に興味を持ってもらえたことでした。
放送後一週間分のツイートで『What is LOVE?』を検索すると、番組をきっかけに好きになった人がちらほら見られます。中にはiTunesでポチった方もいるみたい。
Twitter検索「 What is LOVE -filter:links since:2015-10-25 until:2015-10-31 lang:ja - Twitter Search 」
※Twitterで10/25~11/1の一週間の日本語ツイートでリンクの無いものを検索した結果。
つんく♂Pには異例のハイテンポ曲 *5 なので麻薬的にハマる要素はあるのだけど、それだけでなく、エモい歌詞や、ダンスへの興味など、様々な理由でリピートしている人がいる模様。
今更感スゴいけど、モー娘の 『What is LOVE?』って相当な名曲じゃないか、これ。https://t.co/6KUOkQxwcP
— 芦田太郎 (@taroashida) 2015, 10月 17
※取材していた芦田Dは収録後に刺さったらしい。編集で歌詞テロップをあらためて見たのかも。
この曲がリリースされた2年前、ラジオ等でメンバーが口々に「いい曲」「つんく♂さんの仮歌を毎日聴いてる」とお気に入りであることを伝え、サビに込められた哲学を心得としたんです。
たった一人を納得させられないで
世界中 口説けるの
そして、この曲を引っ提げて全国を手分けして駈けずり回って、一人ひとりに伝える喜びを実感してきました。
こういう時にハロプロのMVがフルサイズでYouTubeに公開されてるのは、いいことだなあと感じます。
彼女たちにとって、売れるとか売れないとかいう商品としての成績ももちろん嬉しいですが、購入せずともMVを見てもらって、曲が好きとか、詞に共感するとか、感想をもらえるだけで、その小さなつぶやき一つ一つが何より嬉しいんじゃないかと思うんですよね。
今回はそんな当時を思い出す良い機会でした。
関ジャニ∞との共演を終えて
共演したことによる娘。たちの収穫は非常に多かったと思うんです。
関ジャニと言えば……
関ジャニ∞と聞いて、ハローのファンはあることを思い出す人も多かったはず。
今の娘。は9期でさえ直接活動を共にした先輩は5人しかおらず、定期的に接点のあったBerryz工房や℃-uteからも学んできました。そこで「Berryz工房=関ジャニ∞」という構図が効いてた気がします。
個性がバラバラ *6 なのに、瞬間的に全員が同じことで盛り上がる楽しさや爆発力があって、その良さを今の娘。メンバーはよく知っています。
なので、タメ口でもめてたはずが急に全員一斉に立ち上がって大笑いしているような愉快な兄さんたちの姿に、すごく親しみを覚えた気がします。
グループアイドル同士の会話
昔から中居くんやKinki Kidsの番組でお世話になったことはあったと思うんですけど、娘。が「タメ口、どうしてます?」みたいなグループアイドルの楽屋話っぽい話題をお互いに話すなんて機会はあまり記憶にないことです。
最初の卒業となった福田明日香に、中居くんがSMAPで「ある一人のメンバーがやめたんですが…」という表現でエピソードを話したことはありますが、通常の企画としては無いですよね。
吉本芸人×ジャニーズのトークだと、先輩後輩のおごる・おごらないの話をする場面はよく見られます。でも、誰と誰が仲がいいというレベルからもう半歩進んで、「SMAPさんを『くん』と呼ぶのは実はちょっときまずい」という話に展開したり、「2番の歌詞を唄ってるとテレビに映らないよな」って即座に共感したりといったトークが、同じグループアイドルだからこその共有だったとすれば、それは非常に嬉しいことです。
大人と子ども
今こうやって書きながら関ジャニ∞の面々のプロフィールをググって確認してたりしたんですけど、かえすがえすも大人と子どもだったんだなあと思いました。娘。のプロフィールを年齢順にして貼りますね。
ほとんどが90年代終わり頃の生まれ。10期・工藤がよく「『LOVEマシーン』発売後生まれなんです」って自己紹介して驚かれるのだけど、それって例えば、iMacでインターネット接続して、宇多田をmp3で聴いて、携帯メールで連絡を取り合う……そんなネットを活用する今のライフスタイルに切り替わってから生まれた子どもなんです(逆にラブマ後生まれがどれほど凄いか本人は実はピンと来てない気がするのですよ笑)。 *7
それに対して、関ジャニのメンバーはだいたい96年~97年にオーディション受けてるんだそうで。あらためて、文字通り大人と子どもに近いぐらいの差はあったのだなあと実感しています。
去年、娘。'14はソチ五輪の日本選手団の応援ソングを歌いましたが、長野大会の時点で生まれていた子は13人中4人しかいません。ということは、五輪でV6の『WAになっておどろう』をみんなで歌った頃は大半が生まれてなくて、先日の『学校へ行こう!2015』で「未成年の主張」を再現してましたが、あそこで「言いたいことがあります!」「なーにー!?」って言ってた子たちとほぼ同世代なんですよね。
何を言うか一生懸命考えて練習して屋上に立ってた中学生みたいに、コンサートで堂々と振る舞えるまでになるように、笑っちゃうぐらい決め事を守って訓練を重ねる必要があるんです。「ストイック」という謳い文句でしたが、実のところ、彼女たちの中で「やれるだけのことをやる」という青くさい表現のほうが正しいかもしれません。
だからバラエティ出演でも「これを言おう」って決めてドキドキしながら臨むわけですけど、二手三手と応用を利かせたラリーは上手くいったりいかなかったりして、そんな中、大人と子どもの差を感じさせず、トークもダンスも対等に接してくれた兄さんたちには、やはり、かえすがえすも感謝しかないのです。
皆で頑張っていきまっしょい!をした後に、 関ジャニの二人が娘。達に「お願いします!」と頭を下げていたのが凄く印象に残っています。娘。達を年下の女の子としてではなく、同じ業界で頑張る対等な相手として接しているんですね…! pic.twitter.com/HMhhmEkYMy
— シモ姉 (@simoane85) 2015, 10月 25
なぜ出演が叶ったか?
色んな面で恵まれた出演だったと思うんですが、前述の通り音楽番組制作班が作っていて、バックナンバーを見ても手堅い出演者が多い中、なぜこんな好意的な企画が実現したんだろう?って、ちょっと考えてみました。
で、これは完全に憶測なんですけど、きっかけはMステ現場にあったのかなあという気がしています。
Mステ現場での、あるエピソード
Mステ担当者的にこれが気になったのかもなあって思いました。
それと放送後、出演者がスタジオからはけていく時 娘。メンバーが立って見送ってから1番最後にはけていったの 出演者にはもちろん、1人1人のスタッフさんにも皆しっかりお辞儀して大きい声で挨拶してて、なんてしっかりしてる子たちなんだ!って思いました 笑
— ゆうちょ (@plu_ulg) 2015, 8月 28
※今年8月28日のMステ(「この感動を共有したい」の回)を観覧したゆうちょさん(@plu_ulg)のツイート。
以前にも聴いたことがあるので、娘。のお決まりの姿勢だと思うんですけど、こうした決め事の徹底が現場の人たちの目に留まり、「モー娘。に出てもらうんだったら、ここんとこの事情を聴いてみようよ」という具合に企画の種になったのではないか。そんな気がしました。
今の娘。にはタレント専業で食べていける子はいないけれど *8 つんく♂Pが掘り出した素材やグループの特異性など、素の部分をそのまま見せれば面白味につながると期待されたのではないかと。
端的に「真面目過ぎて面白い」という企画に仕上げたところ、狙い通り、一般の興味をひく発言は素の一言でした。
飯窪「9期さんにタメ口使うとか考えられないですね」
古田「『期』に『さん』をつけるのか……。」
笑いってやっぱり「他と違うこと(=ズレ)」から生まれると思うんです。「9期さん」って呼び方は「ボケ」ですよね。*9
モーニング娘。をゲストに呼ぶとして、何をしてもらおうかと「他のアイドルと違うところ」を考えた時に、「驚くほど決め事に真面目」という面白さに気づき、それが「ダンスを徹底している」という彼女たちの特徴につながれば、企画は成立します。そんなことを想像しました。
長年のご縁
そして、もしMステ現場からこうした企画があがったとすると、もう一つ思うところがあって、先日のMステ30周年特番(『30年目突入!史上初の10時間SP MUSIC STATION ウルトラFES』、2015.09.23放送)に娘。が出演した時、鞘師や工藤が中澤姐さんをイジって「お母さんのようです」なんて言って、世代が全然違うんですアピールをしてたんですけど、最後にタモさんがこんなことを言ってたんです。
タモリ「ま、先輩って言うけどさほどは先輩じゃないんだよねえ」
※娘。は今19年目なんでタモリさんに比べればもう…(笑) と中澤姐さんが返して和やかにトークはシメ。
これって、都合のいい解釈かもしれないですけど、タモさんから見て「モー娘。は変わらないよな」って言ってくれたような気がして、すごく嬉しかったんですよね。
以前、タモさんがリハで気さくに話してくれたことがブログに書かれてましたが、オープニングのリハで階段でコケた子を心配してくれたり、娘。全員で他の歌手に挨拶する姿も、歌う前の「しょい!」の掛け声も、一時期出演機会の間が開いたことはあったけど、18年間変わらない姿をずっと知ってるくれているわけですよ。それを踏まえて、そういう意味だったらいいなって……。*10
ちなみに、きくちPがHEY!×3や岡女などでかつて娘。と接点があったように、山本EPも、Mステはもちろん、かつて『Mの黙示録』や『Matthew's Best Hit TV』といった深夜番組も担当されていたそうです。トークで出た「中澤さんのころから続いてるので~」とか「道重さんが卒業してからは~」とかいう話をどんな顔して見てたんだろうなあと、ちょっと微笑ましくなりました。
そんな経緯込みで見守ってもらえていたら、有り難いなあと思います。
あと、個人的にも感慨深い思いがありまして。去年、「Mステさん、マツコの解説のタイミングがもうちょい後だったら良かったのに……」みたいなpostをしたんですが、、、
そうしたら、Mステのスタッフによる番組でこんな形で紹介してもらえて。
次を目指したい娘。にとって今回は非常にタイムリーでした。完全に帳消しです(笑)
■
ジャニーズ×モーニング娘。の歌コラボと聴いて、古くからのファンは12年前の『SMAP×SMAP』(2003.12.29放送)で共演したメドレーを思い出す人も多かったようです。それぐらいまれな機会でした。
エンタメ性を強く出したスマスマの演出に比べ、今回は歌ダンス重視という点で、やはりバラエティ番組と音楽番組との違いを感じました。*11 番組の趣旨の違いと同時に、モーニング娘。のテレビアイドルからライブアイドルへの変遷も感じる内容となっていたかもしれません。
ただ、当時も今回も、スタジオライブを行ってから感想トークを収録する流れになっていて、その時に似たような言葉をもらったんですよね。
草なぎ剛「ホントみなさん目がキラキラしててね、パワーもらいましたよ」
安田章大「すごいキャピキャピしてて、すごいいい笑顔をしてらっしゃるから、何とかそこに追いつけって(という気持ちで踊った)」
あの時見ていて、いやいや娘。の方が元気もらいましたよって、今回と同じようなこと考えたなあって思い出しました。やっぱりアイドルの共演は華があって楽しいです。
「道重以外わからない」が解消されたか?……と言われると分かりません。
でも、もし結局一人も憶えられなくても、スイミーのようにフォーメーションを組んで「グループ=個性」で勝負している今の娘。にとって、知らない人が「次にまたモー娘。が出る番組があったら見たい」と興味を持ってもらえたら、それだけでもう十分成功だったと言えるんじゃないでしょうか。
そんな「モーニング娘。」というグループの個性をあらためて引き出してくれた番組に、心から感謝したいです。
◆ ◆ ◆
イノッチの「この感動を共有したい」といい、塚ちゃんの『わがまま気のまま愛のジョーク』ダンスといい、今年のジャニさんとのつながりを振り返ると実に心温まる一年でした。
*1:松潤がPerfumeのWOWOWのライブを観たと聞いて、その後の共演の機会にお礼に訪ねたところ、「振り、揃ってなかったよ」「そこ、もうちょっとストイックにやった方がイイよ」とクールに指摘されて怖かったと話す。それを受けてニノがJ(一時こういう呼び方してましたね笑)はそういうところあると笑っていると、松潤が指先を向ける方向まで振り付けで決まっているんだからそこは合わせなければいけないという説明をしていたんですよね。それはその通りだなあと思いました。
*2:久住小春が新人当時、小川麻琴がダンスの指導をしていて、「ここの振りはこう」「はい、ありがとうございます!」「あ、いえいえ」…というやりとりを延々と続けていて、深夜の帯の頃だったので、寝る前にある意味シュールな映像を見る思いでした。笑
*3:一昨年久しぶりに出演を果たした時、アイドルの出演が多いMステなのでアップが多かったんですが、フォーメーションダンスで売り出し中だった娘。のファンは「顔じゃなくて全体を映して!」「俯瞰のカメラのタイミングが違う!」といった声が多く見られ、それ以降要望を汲んでもらえるようになりました。その仕上がった状態に非常に近い。
*4:職人のワザとは言ったものの、Eテレ的なヒトカラ観察はついザッピングを誘われるのが正直なところだったりします。あるいは、中島美嘉のトイレの特集やジューシーズ松橋がジャンクフードを河村隆一にふるまう企画は、セッションにつなげる目的が見えないなあと悩ましい気持ちです(藤城Dが手がける『333 トリオさん』が終わった後だけに、お笑い好き的に松橋の出演をちょっとナナメから見てしまうところもあり…)。また、幼い頃に『あばれ太鼓』でレコ大新人賞を獲った坂本冬美を見てるのでカラオケで魅力を伝えるところに切なさを感じたり。これはMステの中のコーナー企画にも通じるところだと思うんですが、まだまだ試行錯誤中なのかなあと思いました。とまあ、チクチクとつつくとキリがないので、機会があれば別の場所で書いてみたいです。でもやっぱり、音学講座で新妻聖子が熱唱して古田新太がミュージカルとストレート芝居の違いを解説するっていう「コラボ」は物凄く贅沢だと思います。楽しい音楽番組に期待したいので、突き抜けて欲しいなあという思いです。
*5:つんく♂楽曲は通常、BPM140ぐらいにおさえられるが、『What is LOVE?』はBPM180。スピードを上げることでインパクトは出るがメロディの魅力とトレードオフになるため「禁じ手」としている。
*6:テレビではももちの印象ばかりが強いベリですが、R&B歌手みたいな最年少だったり赤文字と青文字とカリスマ読モが一緒くたになったような7人それぞれの個性の強さが特徴です。
*7:その頃、宇多田もaikoも椎名林檎もヒットを飛ばしていて、嵐がワールドカップバレー開始の1週間前に生まれているので、代々木体育館で『A・RA・SHI』を歌い始めた頃ちょうど産後の保育器から出て退院している計算になります。
*8:頭の回転だけでなく、それを出せる反射神経・運動神経、それと他を押しのけて前に行ける図太さが必要だと思ってます。今のメンバーはそのどれかが欠ける。
*9:余談ですけど、ある会議で「そこは経理さんで対応してもらって…」「君、事務方を馬鹿にしてるの?」と若手の営業くんが怒られるのを見たことがあります。社会人の発想で言うと、娘。が先輩後輩の鉄の掟を貫くあまり、「先輩の○○さんがおっしゃって」とエラい番組司会者を前に真顔で話しているのが滑稽だったりもします。今では芸能界全体的に「○○させていただく」っていう表現が当たり前で、視聴者は朝廷の帝かな?ってツッコむネットの声も時折見かけます。
*10:30周年SPの出演は、時間帯こそゴールデンではなかったですけど、他の歌手が2組ずつで出演していた中、娘。だけはOGと現役で単独のブロックを用意してくれていて、とても大事にしてもらえた気がして、感謝の気持ちで見ていました。工藤静香+森高千里に始まり、加山雄三+ももクロとか、西川貴教+GACKTとか、ずっとそういう構成になっていたと思うんですけど、全部録画した人は見てもらいたいですね。ちなみに、一番最初は黒柳徹子+マッチだったので、こちらも特別功労賞的な扱い。笑
*11:例えば、『LOVEマシーン』の「み、だ、らぁ~」の歌詞に合わせて慎吾くんの坊主頭を撫で回す飯田圭織という構図があったのだけど、置き換えて、すばるくんにフクちゃんが絡んでいくようなイロモノ的な演出はちょっと似つかわしくない空気ですよね。笑