マツコ&柳原可奈子の「第二回ハロプロ緊急会議」で聞かれた喩え話
ここ数年、芸能界にモーニング娘。およびハロプロのファンを公言するタレントが少しずつ増えてきました。その中で特段に熱視線を送り、ファンから一目も二目も置かれる存在が、マツコ・デラックスと柳原可奈子のご両名です。
今年の2月、ニッポン放送『柳原可奈子のワンダフルナイト』にて、新グループ誕生やBerryz工房無期限活動停止に際し、「ハロプロ緊急会議」と銘打って二人がひたすらハロプロについてだけを語り合うという企画を決行しました。およそ週末のAMラジオとは思えない、一般リスナーを完全に放ったらかしにする濃ゆいヲタトーク。これが界隈で大きな話題となりました。
ワンダフルナイトのハロプロ緊急会議、たくさん聴きたい pic.twitter.com/TB3a7QomB0
— 松本勇祐 (@matsumoto_p) 2015, 2月 22
それから半年、今回は第二弾として、8月30日、9月6日の2週に渡り、再び濃ゆいトークが繰り広げられました。
今日夜11時からはニッポン放送『柳原可奈子のワンダフルナイト』。ゲストにマツコ・デラックスさんを迎えての【第二回ハロプロ緊急会議】をお送りします。是非お聴き下さいませ!
— 宗岡芳樹 (@yoshiki_muneoka) 2015, 8月 30
当エントリーでは、モーニング娘。'15について語った後編の中から、ファンでないと分からないであろう様々な喩えを振り返ってみます。
尚、文中では、お二人に対しての敬愛を込めて、マツコさんは「マツコ」、柳原さんはハロプロ呼びの「ヤナカナ」とさせていただきます。
オープニングトーク「自分をモーニング娘。に喩えたら」
放送中に延々と続く喩え話は、オープニング早々に切り出された自身の話から始まります。冒頭、マツコが入れたアドリブをヤナカナが如才無く片付けると、おもむろにこんな話になります。
マツコ「歴代のハロプロのメンバーだったら、誰が一番近いと思う?自分に」
柳原「……加護ちゃん」
マツコ「はっはっ(失笑)。いいねぇ~、あんたって。」
柳原「アッハッハッハ」
マツコ「私、道重ね(キリッ」
柳原「えぇーーー!!?」
(中略)
マツコ「いいのいいの、これは分かる人だけ分かって!っていう。私はねえ、だから声を高らかにモー娘。好きだって言ったのよ!道重を見て黙っていられなくなったのよ!」
マツコ=「道重」
これは、卒コンの日に同じタイミングで足がつったというエピソードが思い出されますが、わたし個人的には、以前のエントリーでジックリと語ったので、まったくもって合点の行く話であります。
ヤナカナ=「加護ちゃん」
一方、こちらは彼女のホームであるラジオブースに居ることが関係している気がします。
以前の放送で、自身のライブについて話す際、「今日はちょっと芸人モードで語るぜ」と言った直後、「芸人モードってなんだよ。普段アイドルとして話してるのバレちゃったぁ」と恥ずかしがっていたことがありました。
日頃からリスナーを「リンゴちゃん」と呼び、アイドルになりきってラジオをやっている彼女にとって、自分は可愛いアイドルであり、そのモデルが「加護ちゃん」だったのだと思います。
モーニング娘。'15を考える
CM明け、いよいよモーニング娘。'15の話題に移ります。
マツコ&ヤナカナの 鈴木香音 評
柳原「'15ですけれども。どうですか、最近の'15は?」
マツコ「あたしとしてはさ、当初からもう、鈴木をね、鈴木の良さ気付いてくれ!って言い続けてきたわけだから、感慨深いものがあるよね。」
鈴木香音がセンターをつとめる新曲『Oh my wish!』のお話。
鈴木香音=「池上季実子・かたせ梨乃・松坂慶子」
マツコ「あたしね、やっぱり香音は将来、これ、池上季実子さんの後を継いでもらいたいと思ってたから…」
柳原「ギャー!アッハッハハハ(笑)」
マツコ「やっぱりそれの段階として、一度はセンターを踏んでもらわないと困るって思ってたからね」
柳原「すっげーわ(笑)」
マツコ「もしくは、もっと、かたせ梨乃さんぐらい行って欲しいと思ってるね逸材なのよ!あたしん中では!」
柳原「(かたせ梨乃というよりは)池上季実子さんだな」
マツコ「池上季実子さん?」
柳原「たぶん(笑)」
マツコ「でもやっぱり池上季実子さんより、若い頃の肉感的な感じで言ったらかたせ梨乃さんよ!池上季実子さんはもうちょっと歳を行ってから肉感的になったから。シュッとしてたからね、季実子はね、若い頃は。浅野温子さんと『陽暉楼』で殴り合いしてた頃はシュッとしてたからね。」
柳原「アッハッハハハ!(手を叩いて笑う)」
(『陽暉楼』1983年、監督:五社英雄)柳原「あ、松坂慶子さんとかどう?」
マツコ「あぁ! ていうかスゴいわね香音! 池上季実子・かたせ梨乃・松坂慶子よ!? ……早すぎたのよね!!早すぎたのよ!」
柳原「早すぎたのかなあ、色々ね」
マツコ「なんか色んな、モー娘。って、色んな形があっていいと思うのよ。その中でやっぱり香音的なものっていうのが、こういう形でね、出たっていうのは、ちょっとなんというかね」
柳原「嬉しいよね」
画像は、上段左から池上季実子・かたせ梨乃・松坂慶子の若い頃。下段は参考までに鈴木香音(2枚とも16歳)。
いずれも昭和40年代以前の生まれなら知らない人はいない名女優です。並べてみると、マツコが彼女にイメージしているのは、艶めかしい女性たちが数多く活躍する五社英雄作品の世界観なのですね(笑)。そう考えると、『黒バラ』出演時、カンニング竹山さんに「太秦行ったらかわいがられそう」と言われたことと不思議とつながります。
上の画像は、大御所女優の若い写真を選びましたが、実際にトークを聴くと、マツコのイメージは「若い頃の季実子・梨乃・慶子」では無いようですね。シュッとした姿でなく、成熟した肉感的な色気あふれる女優の完成形が前提で、そこから時間を巻き戻すと鈴木香音に一致するようです。
とはいえ、単純に同世代の写真を並べると、なんとなくイイ線いくかもって思えて面白いですね(笑)。
マツコ&ヤナカナの 飯窪春菜 評
続いて、話題は飯窪春菜へ。
マツコ「飯窪さんはどうなのよ?」
柳原「飯窪さんはいいよ!」
マツコ「飯窪さんは、これ、あたしたちに飯窪さん語らせたら大変よ!」
飯窪春菜=「パセリ」
柳原「飯窪さんはパセリだよ、パセリ。」
マツコ「……それ、ちょっとイイ風に言いなさいよ。パセリの良さを言いなさいよ!」
柳原「ハイハイ、じゃあオムライスがどーんとあったとしよう。」
マツコ「あたし、悪いけどオムライスにパセリはいりません。」
柳原「えぇ~!なんてこった」
マツコ「パセリは駄目!パセリって表現は駄目ですよ!」
おそらくヤナカナは、「メインではないが、全体の調和を考えると欠かせない」という意味で引用していて、和食のダシや洋食のコショウのつもりで言っています。
が、世間一般のイメージは「パセリ=要らないもの」が大多数ですよね。そこを察したマツコはすかさず火消しを展開。ヤナカナのセンスって、興味あるものには物凄い観察眼を発揮しますが、それ以外は意外と世間知らずだったりします。
防戦一方のヤナカナをよそに、マツコは更に展開していきます。
飯窪春菜=「プリンセス天功」
マツコ「あたしたちは、かねっがね!飯窪さんを愛し続けた会議を!闇会議をしてるんですよ!」
柳原「そうそうそう。」
マツコ「あたし、今回の『Oh my wish!』は、香音がセンターに立ってくれたってのも嬉しいんだけどね、飯窪さんがちょっといい所に居るってのもね…(含み笑い)」
柳原「アッハハハハハ!いいよね」
マツコ「かなりグッと来たのよ(笑)」
柳原「いいよね。いいね、飯窪さんの(ポジション)ね。」
マツコ「飯窪さん、あれよ? こういう言い方、また抽象的って言われるかもしれないけど、古き良きハロプロっていったら、飯窪さんなのよ! ちょっと分かりづらいかもしれないけど。」
柳原「えー、実は実は。」
マツコ「そうじゃない? あんたもそういうこと言ってたじゃないのよぉ。」
柳原「まあね、飯窪さんに関してはね。」
マツコ「飯窪さんって、こう、凄い綺麗な顔してるんだけど、たまにとんでもない顔してPVに映ってる時あるでしょ? それがハロプロなのよ! シュッて、ずっとシュッとしてるのがハロプロじゃ無いじゃない。」
柳原「わかるわかる」
マツコ「飯窪さんってたまに、『どうしてこの顔を使ったんだ!?』っていう顔でバッと抜かれる時あるじゃない?あれがもうグッと来るの! いや、綺麗よ!?綺麗さで言ったら今トップクラスだかんね、'15の中にいる中で!」
柳原「うんうんうん」
マツコ「スタイルもいいしさあ!」
柳原「うんうんうんうん」
マツコ「でもやっぱり、こう…プリンセス臭が抜けないじゃない…天功ね」
柳原「アッカカカ…(声にならない爆笑) プリンセスてんこwww プリンセスてんwwww」
マツコ「やっぱそれはね、プリンセス天功は一人居てくれないとね!そりゃあもう、こっちも退屈でしょうがないわ!そんなもの」
柳原「いや、ゴメン!…ありがとう、パセリの拙さをプリンセス天功に」
マツコ「うん、パセリは駄目だよ!」
柳原「ごめん!ごめん!ほーんと」
マツコ「プリンセス天功だからね!? 2代目引田天功だよ!ね!?」
柳原「いやあ、聴いたか?みんな、これがトークの技だよ。」
マツコ「初代は男だったんだよ!だから引田天功っていうんだよ! ね?」
柳原「アッハッハッハ!」
マツコ「大脱出が得意だったんだから!」
柳原「ウファッハッハッハ!」
マツコ「飯窪さんも脱出しそうじゃないのよ、これ!」
柳原「凄い!人材豊富だね。池上季実子さんに…」
マツコ「いやいやもうホントあたし、飯窪さんっ、飯窪さんっ大好っき!」
ビジュアルのイメージから「プリンセス天功→脱出→飯窪さんの現状からの脱出」とつなげました。これにて火消し完了。いや火消し関係なく、ビジュアルと脱出の合わせ技はなかなか言い得て妙だなあと思いました。お見事です。
TLを眺めていたら上野さん(@uen0)が、プリンセス天功のニュース映像を引用していました。2007年当時のようです。
この人が二代目引田天功(プリンセス天功) #jolf pic.twitter.com/vWxfEGUrMu
— 上野尚人uenotakato(イマイさん (@uen0) 2015, 9月 6
文字通り魔女のような存在になって久しいですが、おそらくマツコのイメージは、先代を引き継いで大掛かりな脱出マジックに挑戦していた80年代のうら若き2代目天功を指していると思われます。
イリュージョニストとして余裕の表情で魔術を繰り出す一方、プリンセス天功は時に必死の表情を見せることもあります。
幼い記憶ながら、わたしが見たのは、船の上から抜け出す大掛かりな脱出マジックに失敗した場面で、駆け寄った救助ボートでぐったりした姿が衝撃的でした。バラエティの中のドキュメンタリー要素という意味で、合宿や手売りやレッスンで力を使い果たすASAYAN時代のモーニング娘。に近いかもしれませんね。
マツコはMVの表情に触れていました。飯窪さんがフォーメーションの中で見せる必死な表情に、まるで何かに取り憑かれたように食らいつく、かつてのモーニング娘。を見る思いだったのでしょう。
※魔術を繰り出す飯窪さん
飯窪さんの喩えの出来をしきりに気にする二人。ヲタトークでついついネタに走ってしまうのはありがちな話ですが、そんな中、徹底して「飯窪さん愛」を訴えていました。
テレビの世界の人たちなので、動画も見ず書き起こしテキストに文句を言う今を憂いた「最近の子ね、行間を読まないからね!文字だけにして色々言うから!伝わんないんだよ!」というご指摘は実にごもっともで、わたしの書き起こしもマイナスにならないかと気を揉んでしまいます。
ただ、実際にラジオを耳にして、同性のファンが多い飯窪さんだけに、飯窪さん=「何をやってくれるのか同性として気になる存在」である、という二人の気持ちはヒシヒシ伝わってきました。
マツコ&ヤナカナの 尾形春水 評
マツコ「さっ!12期。」
柳原「12期ねえ……(しばし沈黙)」
マツコ「噛み締めてるわねえ(笑)」
柳原「そうねえ…ちょっとまだこうさあ、胃に優しいよねえ、みんな。」
尾形春水=「鬼瓦」
12期の中では、尾形春水が具体的に喩えらえていました。
--13人もいる中で12期が前に出るのは難しいという話から、、
マツコ「もうちょっと待ってあげようよ。でも、その割には片鱗を見せてるじゃない。」
柳原「うんうんうん。」
マツコ「尾形なんて、隠し切れないものがあるよ。」
柳原「アハハハハ、尾形さんねえ。」
マツコ「尾形さん凄い。」
柳原「尾形さんの自己アピール、上手いもんねぇ~。」
マツコ「あたし、これ、すっごい褒め言葉で言ってるから誤解しないでよ……」
柳原「うん」
マツコ「……『鬼瓦』って呼んでるの。」
柳原「アハハハハハハハハハ! うっそ、パセリより伝わんないよ、それ。」
マツコ「伝わんない!?だって…」
柳原「伝わんないよぉ~。」
マツコ「『うわぁ!鬼瓦!!』っていう、やっぱりこうあるじゃない。ねえ?昔ながらの家にね。それぐらいのブワッ!と迫り来るものが彼女にはあるわよ。」
参考までに、マネージャーさんのツイートから「うわぁ!鬼瓦!!」の一例を。おしとやかな1枚目を見せてからの2枚目でがぶり寄り。お上手です。
いろんなお知らせがありましたが、最後はやっぱり、尾形春水 16歳の誕生日♪ 不器用だけど、黙々と頑張り屋の尾形。 次に春ツアーで大阪に来るときの成長した姿、楽しみにしていてください! #morningmusume15 pic.twitter.com/lik4XnK9Vt
— モーニング娘。'15マネージャー (@MorningMusumeMg) 2015, 2月 15
一般に、鬼瓦は家内の厄除けの役割を果たしているといいますが、怖い顔うんぬんではなく、マツコの注目は尾形春水の「主張の強さ」と「存在感」にあるようです。
大阪人だからといって芸人のよう喋り倒すわけではないし、フィギュアスケートをダンスに活かして目立つとかもありませんが、隙あらば飄々と前へ出る様子に只ならぬ勘と強い意思を感じますし、何より、彼女のユニークな個性が自然と引き付ける力を持っているように思います。
例えば、画面の中の居場所で見ると分かりやすいのですが、彼女が端のほうで一言発すると、その瞬間注目が集まるのですよね。中心の会話に話を寄せていくより、中心で話している流れを自分に向ける場面をしばしば見かけます。
--工藤と石田が中心となってトークしてる場面、「誰の足を触りたい?」という話になったところで、スッと尾形が「鞘師さんの触りたいでーす」と入っていく。するとカメラが彼女をとらえる。
※イベント中のトークで、ガヤを入れたからといって必ずしもフォーカスがあたるとは限らないが、この時、彼女は自然とカメラを引き寄せて画面の中心に映る。
※会話に寄せに行く中間管理職スキルの小田さくらが常に画面の左右どちらかに映るのとは対照的。また、「誰の足を触りたい?」と画面の外から訊いてくる飯窪さんも特徴的。
/『Oh my wish!/スカッとMy Heart/今すぐ飛び込む勇気』発売記念イベント(2015.08.19、川崎クラブチッタ)*2
日本の家屋を空から見た時、瓦屋根がきれいに並んでる様子はフォーメーションダンスを連想させるものがありますが、フォーメーションの一部に収まるだけでなく、鬼瓦のような「個」としての自分も持っている点でモーニング娘。らしさがある、ということを言っているのだと思いました。
喩え話が止まらない中、最後に、ハロプロを語るマツコは自身についてこんなことを。
マツコ=「扇千景ではちょっとエラそうなので、辻元清美?…井脇ノブ子!」
--昔の個性的なモーニング娘。も見たいという話をするのは「保守派閥」的でよろしくないけれども…という自戒めいた話から、、
マツコ「また『保守』って言われるけど!」
柳原「私も!」
マツコ「見たいのよ~。扇千景みたいなもんよ、だから。状況的にはね。」
柳原「扇千景みたいなモンなの!?『モーヲタ界の扇千景ですけど』(笑)」
マツコ「ちょっとそれなんか駄目だわ、やっぱり!ちょっとエラそうだわ。」
柳原「アハハハハ」
マツコ「じゃあ、あたし誰よ!」
柳原「誰にする?(笑)」
マツコ「辻元清美?」
柳原「アハハハハハハハ!!」
柳原「井脇ノブ子!(拍手)」
最近ハロプロの現場の女子の割合が増えました。とはいえ、やっぱりアイドルヲタクって一般的に男社会だと思うんですよね。
そんな中、オンナ目線で、議長のような束ねる立場ではなく、斜めから見遣る個性的なウルサガタとして在り続けたい!という気持ちを、自虐混じりにアクの強い女性政治家に喩えてお開きとなるのでした。
こういった喩えを交えたヲタ話は、知識量が多いだけに延々止まりません。ここからは、その「ヲタ」であるヤナカナの話。
センターを獲ったヤナカナの思い出
どうして彼女たちはこれだけアツく語るのか? 彼女たちの会話から、ファンの楽しみ方も見えてくるような気がしています。場面を番組の序盤に戻し、ヤナカナ自身の話に注目します。
『総武線の女子高生』
センターの座をつかんだ鈴木香音の喜びがいかほどであったか、を想像する中で、二人はこんな喩えをしていました。
マツコ「もう無理かもって思ってた人が、ハイじゃあ次センターやっていいよって言われた時、どうなんだろう?」
柳原「どうなんだろうね」
マツコ「あたしたちの人生で喩えたらどういう瞬間?」
柳原「うぅん?」
マツコ「あなたも、ほら、『総武線の女子高生』でさあ、一時代を築いた時あったじゃない?」
柳原「(こみ上げる嬉し笑いに震えながら)……ふっ、嬉しかったぁ」
マツコ「あははははは!」
柳原「あははははは!」
マツコ「じゃあ、それじゃない!今の香音は『総武線の女子高生』よ!(笑)」
柳原「やっだぁ!じゃあ今、楽しさとプレッシャーと色々半々かなあ…(遠い目)」
マツコ「……」
柳原「いや、でも、あたしは、あたしは、」
マツコ「え、これあんたの思い出話、言い始めるの?」
柳原「あたしは、ホントにぃ、やっぱり、『やっぱあたしの面白さに気付いたぁ?』みたいな感じだった。『やっぱりぃ~?』みたいな。だから香音もそう…どうだろ、そう思ってるかなぁ…『私の可愛さと歌の上手さに気付いたぁ?』と思ってるかもしれない…あ、分かんない、あたしはちょっとそういう…」※ひとり悦に入っていく
マツコ「ちょっと、もう、黙ってもらっていい?(失笑)」
柳原「ごめんごめんごめん!やだぁー!もぉー、でね、面白か…楽しかったのぉー!!あの、この、あの…」
マツコ「まあ、ああいう時って楽しいよね。だからたぶん、いま香音は、色々キツいこともあったけど、楽しいは楽しいと思う。」
柳原「楽しいよねぇ。わーっと来た時って 何か も分からなかったけど、やり甲斐は感じてたかもしれない。」
かつて柳原可奈子がヒットを飛ばした初期の持ちネタ、それが『総武線の女子高生』です。
JR線の車内にも関わらず、シートに足を広げて座り、鏡片手に一目を憚らずメイクをし、PHSで友達と連絡を取り合う、当時の総武線沿線で見かけるそんなポストコギャル女子高生の生態を鋭く切り取った名作です。
コギャル世代である彼女の目線で、渋谷から発信する女子高生のギャルファッションが郊外や地方都市でカスタマイズされながら派生する風俗文化の側面を鮮やかに風刺しており、当時ハタチそこそこであった彼女の職人のイメージを強く印象づけたこの作品、『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』など当時のネタ番組を通じて、柳原の名を世間に知らしめる出世作となりました。
いわば、彼女にとってモーニング娘。の『LOVEマシーン』のようなものなんですよね。
マツコ&ヤナカナの親和性
ヤナカナの作品には、他にも『渋谷109のショップ店員』『女子大生マミ』『スタイリスト北条マキ』など名作はいくつもありましたが、マツコがこのネタを出したのは、たぶん理由があります。
彼女は『月曜から夜ふかし』をはじめ、あちこちの番組で錦糸町の良さを主張しています。これは実家の千葉・稲毛から東京への玄関口として、古き好き思い出の土地であることに由来します。そして、稲毛から錦糸町を経て今の住処の新宿へ運んでくれるのが、他ならぬ総武線なのです。
かねてよりマツコの本職は、女優やタレントなど旬な「女」という食材をササッと調理するがごとくコラムに仕上げるというもので、同様に、今どきの「女」という食材を自らなりきってコントに仕上げる職人にはシンパシイがあったはずです。しかも、自分のノスタルジーをくすぐる総武線の風景の移り変わりを忠実に再現している。柳原可奈子という新人女芸人への思い入れは、この時点から揺るがぬものであったに違いないはずで、マツコ&ヤナカナが近しい関係になったのは必然だったと思うんですよね。
が、実は二人は旧知の仲ではありませんでした。接点を持つようになったのは、つい2年前。マツコがファンを公言したのをきっかけに連絡先を交換したと同ラジオで報告しています。
ファンが好きな気持ちを声に出すと思わぬ出会いに恵まれる、という好例だなあと思います。SNS上のファン同士のつながりでも感じられることなのではないでしょうか。
なりきり芸人の憧れ
ヤナカナがテレビで不動の存在となって、10年近くが経とうとしています。その後も秀逸な作品を世に送り出しています *3。彼女を追うように、今どきの女子のあるあるネタを一人で演じる女芸人が何人も現れましたが、その芸が秀逸であればあるほど、世間には「柳原みたいだね」と喩えられ、そしてそれを光栄に感じているようです。
柳原可奈子さんの単独ライブを見させて頂きましたー!はあー全部全部全部すごくって面白かったですー!!終わってからご挨拶も出来て、嬉しくて嬉しくて舞い上がりましたー!ただのファンでしたー!
— 横澤夏子 (@45sawa72) 2014, 9月 23
※参考:ヤナカナと同じく一人コントのなりきり芸を得意とする女性ピン芸人、横澤夏子のツイート。
ディスコ調の曲を歌うアイドルがテレビに出た時、TLで「この曲、モームスっぽいね」というツイートを見かけたことがあって、どこか似たようなものを感じました。そういった時、曲を連想する視聴者が『LOVEマシーン』を思い浮かべるように、柳原の再来を感じる人を見てイメージするのが『総武線の女子高生』なのですよね。
「モーニング娘。のライバルはモーニング娘。である」という言葉をよく耳にします。これにならって喩えれば、柳原可奈子のライバルはもしかしたらあの日の柳原可奈子なのかもしれません。
本当の柳原可奈子
そんな憧れられる存在となった、柳原可奈子の今について思うところがあります。ちょっと思い出してもらいたいのが、この2つ。
- 最近、どんな番組で柳原可奈子を見ましたか?
- その時、彼女は何をしていましたか?
ヤナカナさんは器用な人です。カラオケ歌番組で司会をやれば女子アナのようにそつなく進行して、旅番組で食レポをすれば食通のように気の利いたコメントをして、情報番組の天の声では声優のように個性的なナレーションをして、ゴールデンタイムのお茶の間向けバラエティで面白おかしくクイズやゲームをやる様子はアイドル以上にマスコット的であったりもする。様々なテレビ番組でかゆいところに手が届くマルチな活躍をしています。
が、一方で、芸人さんでありながらネタを披露する機会はとても少なかったりします……。
昨年の秋、わたしは『柳原可奈子単独ライブ「普通の女」』を観に行きました。
そのオープニングコントは、舞台上の下手側に机があり、そこで「ヤナシー関」を名乗るコラムニストに扮したヤナカナさんが執筆しながらブツブツ言うというもの。器用に振る舞って活躍する「とある」女芸人に対し、節操が無いと痛烈に批判するのです。
そこから始まる本編では、まるで本当の自分探しをするかのように、様々なシチュエーションで様々なキャラクターの女性になりきります。数本の一人コントを存分にやり切って、最後にはハロプロ曲を笑い抜きで熱唱する、というやりたい放題のステージでした。
柳原可奈子単独ライブに行ってきた。お得意の成り切りコントは素晴らしかったんだけど、エンドロールが終わった後おもむろにアイドル衣装で現れ、笑い抜きの全力で『シャイニング 愛しき貴方』を歌い上げ(これも成り切り芸ではあるけど)「柳原可奈子でしたー!」と挨拶。ハロヲタ魂を見せてくれた。
— もかまっちゃ (@_mochamacha_) 2014, 9月 23
実は、事前にラジオで開催の経緯を語っていました。
単独ライブを企画するに至ったきっかけは、前年の大晦日、年が明けるというのにボーッと『ビッグダディ』の録画を見ていて、元日午前中の特番出演に備えて早々に寝ようとしている自分に、ふと「自分は駄目だなあ」「何かやらなきゃ」と悩み、単独ライブを思い立って実現したのだそう。
一見、華やかな世界のトップランナーでも、その実、どこか鬱屈とした思いも抱えていて、本職をないがしろにしている現状と常々戦っていたのです。
とはいえ、この3年ぶり2度目の単独ライブは、わずか2日間3公演でつつがなく終了。これが終われば、また元の生活へ。そして彼女は、今日もまたテレビの世界で気遣い細やかなタレントさんとしてお仕事に勤しんでいます。
そんな彼女が一番自然体で居られる心の拠り所が、『柳原可奈子のワンダフルナイト』なのです。
■
「私には9期を育てるという希望があるから、何があっても大丈夫」
「まーちゃんを産みたかった」
「羽賀ちゃんはまだ赤ちゃんだと思う」
ラジオを通じ、名言を数多く生んできました。我が子を愛でるがごとく、モーニング娘。が心の支えだと言い切る彼女は典型的な母親感覚のハロヲタ/モーヲタです。
しかし、彼女が『総武線の女子高生』についてキラキラとした声で振り返る声を聴いていたら、コンサートにお芝居にイベントに毎日盛り沢山のヒリヒリした生活に立ち向かう娘。たちに、かつての自分を重ねたりして、無邪気で楽しそうでトコトン突き進む姿を見るにつけ心洗われる気持ちになるのだと思うのです。
エンディングで、「今回はちょっと日常の会議の様子を見せてしまった」と振り返っていました。同じファン目線で聴くことで、彼女たちについてより一層分かったような気がします。
思えば、第1回のハロプロ緊急会議は、こんなやりとりから始めていました。
--CM明け、スラスラと進行台本を読み上げたところで、、、
マツコ「いやいや、お見事。あんたさ、色んな番組出てるけど、どれが真実なの?」
柳原「え、何?真実って」
マツコ「どれが『ハダカの可奈子』なの?」*4
柳原「そんなのどこにも居ないわよ。」
二人「あははははは!!!」
柳原「いやだ(笑)」
マツコ「いやだね、あんたって。」
柳原「いやだね、あたしって。そういうところあるよねえ。」
マツコ「でも、それがいいんだって。あんたがハロプロ好きなの分かるもん。」
柳原「拠りどころみたいな。」
マツコ「浄化作用よね。」
本当の自分が「どこにも居ない」なんて、強がり以外の何モノでもありません。
そんな自分はヤだなあと笑いながら、パーソナリティの役目を果たすヤナカナさん。でも、そんな彼女もラジオの前でハロプロを語る時、心を浄化させながら、ほんのちょっとだけ本当の自分を見せているのではないでしょうか。
今回も楽しい時間はあっという間でした。また次回、お二人の本音を聴けるのが楽しみです。
◆ ◆ ◆
近影:新作『意識高い系女子・意識谷高子 29歳(いしきだに たかこ)』
「FB…あ、ごめんなさい、Facebookに上げてます」という【意識高い系女子】は、お手製のフレッシュジュースを入れたメイソンジャーとヨガマットを持ち歩き、資格取得とエクストリーム出社とパワーナップを推奨する。ヤナカナの演じる女子はいつもエッジが効いていて、どこか彼女の分身でもある。
*1:引用元:朝風まりの画像 アルパカ速報
*2:“激痩せ”モー娘。ズッキ、早くもリバウンド「体重計に乗れない」 シングル「Oh my wish!/スカッとMy Heart/今すぐ飛び込む勇気」リリースイベント - YouTube http://youtu.be/fZMjNhb6-rQ
*3:わたし自身、単独ライブで『北斗晶のモノマネ』の初出しを観て、こりゃあこれからこのネタを沢山見ることになるだろうなあとウキウキしたのをよく憶えています。『リゾナントブルー』のようなものですね(笑)
*4:単独ライブのきっかけが『ビッグダディ』で、ここで『ハダカの美奈子』のパロディ。テレビの世界のコンテンツがネタとしてつながっています。