テレ娘。

「テレビで見かけた娘。さんたち」 略して、テレ娘。 テレビ好きの目線から、画面に映った娘。さんたちについて触れます。

※ことわりなくツイッターの発言をお借りする場合があります。不都合がありましたらコメント欄にてお知らせください。

『ミュージックステーション』 今こそ知って欲しいマツコが語る「モー娘。の凄いところ」の真意

『ミュージックステーション』 今こそ知って欲しいマツコが語る「モー娘。の凄いところ」の真意 - テレ娘。
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※当記事は、後日上げる道重卒業に関する更新のブランチポストとなります。

→ 2014.05.10 上げました。 『ハロ!ステ#65』 道重さゆみとモーニング娘。'14の恩返し~母の日を前に~

 

 

 

4月23日、モーニング娘。が道重リーダーの体制になって3度目となる ミュージックステーション への出演を果たしました。

 

これまでのようにガチガチではなく堂々と、かつ程よい緊張感で、自分たちらしいパフォーマンスを披露しました。が、今回は一曲のみの披露、かつトップバッターであったため、タモリさん×娘。でのトークの場面もなく、ちょっとTwitterのタイムラインも寂しかったような印象は否めません。

こんな風に思うのは大変贅沢な話ですが、でも、今回が寂しかったというより、6年ぶりの出演となった(初出演と言っても過言でない)あの夏の出演が鮮烈過ぎていたのかなあと思いました。

 

あの日のことを振り返ると、今、何が足りないのか分かる、、、かも?

 

 

夏の『Mステ』プレイバック

 

2013年8月23日の『ミュージックステーション』への出演は、精力的なプロモーション活動を行った夏のモーニング娘。の快進撃に彩りを加える出来事でした。

 

特別にあつらえた衣装、本放送前の『ミニステ』、紹介VTR、2曲の披露、更には、当日に至るまでの真夏の暑さの中で臨んだプロモーションに加えて、前々日の『めざましライブ』で2名が熱中症で倒れるなど、目を見張る奮闘のさなか、並々ならぬ思い入れで臨んだ彼女たちが憧れのスタジオに興奮する様子が見られて、画面越しに見守るファンにとって非常に力のこもる放送でした。

 

そんな中、当時のメモから小さなファインプレーをいくつか。

 

道重以外 初めてだよね?

タモさんの「道重以外 初めてだよね、俺」については、『笑っていいとも!』にテレフォン1回とコーナー企画で『LOVEマシーン』の替え歌を歌いに行っているので、ファンも一様に「あれ?」となりますが、ここで道重リーダーはスルーします。

もし、ここで「実はお昼の番組には何度かお邪魔しているんですけど、ミュージックステーションは初めてです」と答えてタモさんが「ああ、そうか。悪い悪い……」と返すようなやり取りが1往復発生したら、おそらくその後の、見どころを伝えるフクちゃんのくだりか最年少のくどぅーの話のどちらかは収まらずタイムアップになっていたはずです。

そもそもタモさんに違うと申し出るのも気が引ける話で、そんな様々なファクターを踏まえた道重さんは、否定をせず、肯定をしているかのように「6年前に出た時はお家で見てたと思います」という説明に切り替えたのでした。MステのMCはガチガチに台本で固めていると言われていますが、タモさんがちょっと気を利かせてアレンジしてのプチハプニングだったのかしら。。

 

夏うた=ハピサマ

当日は楽曲名が事前に公表されず、「夏の歌特集」という企画だけ流れていました。タイムライン上で、『サマーナイトタウン』か『真夏の光線』か、といった予想のツイートが出回りましたが、『ハッピーサマーウェディング』にしたのは上手いなあと思いました。

というのも、この曲って、加入したばかりの4期がレコーディングで苦戦を重ねて出来上がったものなのですよね。

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ファンでない限り、過去の娘。楽曲の記憶に残っている歌声はCD音源です。つまり、加入直後で素人同然の子供だった4期の声が記憶のデフォルトになっています。

去年の今頃、音楽番組に出演する際の大きなストレスの一つに「ラブマ問題」がありました。多くのファンは『LOVEマシーン』を歌った時にTwitter上で見つける「黄金期との比較」を嫌い、「ラブマを歌わされる」という過去の曲へのコンプレックスがありました。(現に、この放送の一ヶ月前のフジテレビ『FNSうたの夏まつり』でも、様々な声が上がっていたので、何となくいさめたいような気持ちでpostしたのを憶えています。 『FNSうたの夏まつり』新生モーニング娘。に対するフジとマツコの優しい配慮 - テレ娘。 )

そんな折、この曲を選択することによって、過去の楽曲のレベルと遜色ない歌唱を披露することができました。タイムラインで検索すると概ね上々。また、メンバー構成も当時の体制と似通っていたので、視聴者に「比較」をさせるのでなく、久しぶりにモーニング娘。が戻ってきた「懐かしさ」を与え、総じて好印象だったように思います。

更には、この楽曲をフリにして、イメージのガラリと変わる『わがまま 気のまま 愛のジョーク』を続け様に披露することで、過去も踏まえられ、かつ自分たちの色も出すことに成功。「今のモーニング娘。」(←すでに懐かしい表現)をPRするための最善の工夫がなされていたのですね。

 

自己紹介ではなく、推薦コメント

世間に対する何よりのアピールとして、マツコ・デラックス氏からコメントをもらったことは特筆すべき事でした。 

ナレーション「【モーニング娘。ブーム再来!】 結成16年目、現在のメンバーは10名 平均年齢16歳。女性アイドルの競争が激化する中、今年発売された2枚のシングルが連続1位を獲得! なぜ今 モーニング娘。なのか、この方が語る!

 

マツコ・デラックス「殺伐とした日常に 彼女たちのDVDが癒しになってるわよ」(ワイプのメンバーから喜びの声)

 

ナレーションモー娘。の凄いところ その1 リーダー道重さゆみ 24歳在籍10年 去年モーニング娘。の8代目リーダーに就任した道重さゆみ

 

マツコ道重の存在がデカイわね。美しい、彼女は。

リーダーになり あたしみたいなのが熱中できるカッコ良さみたいなのが加わったんだよね。彼女がひとり佇んでることによって『やだ、なかなか凄いことしてるわね、この子たち』っていう」

 

ナレーションモー娘。の凄いところ その2 フォーメーションダンス】 一列から円形へ。次々とフォーメーションを変化させる激しいダンス。厳しいレッスンの上に到達したこのクオリティーが今のモー娘。の人気を支えている」

 

マツコカッコイイよね、分かりやすく。凄いことやってるのよ、この娘たちっていう」

 

ナレーション「ブーム再来のモーニング娘。進化したその姿を今夜披露!」

 

マツコ「あと最後にもうひとつ言っていい? タモさん(あたしのことを)怖がらないでねえ」

 

完全にマジなトーンが続いたので、「マツコ、言わされてるの?」と心配になりましたが、最後に、『タモリ倶楽部』に出たいのに出してもらえない、という切実な思いをタモさんにぶつけるというネタを入れていたので、「ああ、良かった。ちゃんとマツコのコラムだった」と一安心。笑

社会・文化・芸能のご意見番ともいうべき存在である彼女の口からモーニング娘。の良さが語られたのは大きな後押しになったのではないでしょうか。

 

この時、初見ではとても短いVTRがさらっと流れて終わってしまう感じだったのですが、見直してみてその言葉に含まれる意味を考えると、今の娘。の強さの秘密が理解できるような気がしました。ちょっと掘り下げてみます。

 

 

「道重は美しい」

 

これまでテレビアイドル・道重として、「私が一番カワイイ」とうそぶいて周りの芸人が「そんなことない」とたしなめる一連のくだりが一般視聴者のおなじみだったわけですが、それを根底から覆す真顔の評価でした。それを受け、道重さんはワイプ画面で「うっふん」とばかりにキメポーズを作ります。

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さすがバラエティタレント。ももちが頭角を現した一方で「道重って最近見ないよね」という世間の声を一瞬でうっちゃる素晴らしいカウンター……と喜んでしまったがために、ほとんどの視聴者はおそらく重要なところを見逃してしまっているんですよね。コメントはこう続きます。 

 「リーダーになり、あたしみたいなのが熱中できるカッコ良さみたいなのが加わった」

このコメントから「美しい」という評価の真意が見えてきます。

 

「美しい」の定義

 

以前新宿の場末で呑んでいた時、カウンターで隣り合わせた客にこんな話を聞いたことがあります。

その人の行きつけのゲイバーに、モデルのようにきれいな女性客が入れ代わり立ち代わり集まるというお店があるという。その目的はカウンター越しのママとの会話。どんな会話かというと、ちょっとした懺悔のようなことだそうで、女性客は自分の悩みを洗いざらい話すんだそうです。するとママはその女性に対し、延々と罵倒するのです、「お前は醜い」と。外見がどんなに綺麗であっても関係ない、お前が悩んで悔いているのはお前の心が醜いからだ、と散々に言って、それを聴きながら女性客はさめざめと泣いて悔い改めるんだそうです。

男性の姿で生まれてきた女性は、もちろんコンプレックスから美意識は非常に高く、こと「美しい」という言葉に対しては非常に哲学的な考えを持っています。その店のママにとって、表面的な部分はどうでもいいんですよね。彫刻のように綺麗な顔の女性が目の前に現れても、話を聴いて醜いものは醜いと諭すのです。

マツコの価値基準も同様なのです。

人気の女子アナだろうと並み居る女優だろうと「醜い」「安い」と一蹴します。[マツコ 女子アナ]で検索すればすぐに見つかると思いますが、ぶりっこの「女子アナ」は嫌悪のまなざしで捕らえ、経験を積みスキルを磨いた一人前の「女性アナウンサー」こそ【美しい】と評価する姿は、以前バラエティ番組などで度々見られました。アナウンサーに対して「かわいい」なんて採点基準には入らないんですよね。

彼女の「美しさ」の対象は、「外見」ではなく、「優しさ」だけでもなく、内面的な「強さ」や「厳しさ」など自ら律する意識的な部分を指すわけです。

 

道重への理解

 

つまり、(失礼ながら)道重さんの風貌のことを言っているんじゃないんですよね。そのヒントは『愛の軍団』のソロパートだと思うんです。

目的知らず この世に生まれ

歳 重ねた今

使命感的な何かが生まれてきたのは事実

 

モーニング娘。/歌詞:愛の軍団/うたまっぷ歌詞無料検索

初めて聴いた瞬間、これはエモーショナルだなあと唸った一節ですが、同時に、都会にひとり暮らししている人間にとっては強烈なシンパシイを呼ぶ言葉でもあります。

 

マツコの来歴

高校卒業とともに都会に出て、自分の生きる場所を求めて新宿二丁目に足を踏み入れたマツコ。出身は千葉の稲毛なので、距離にしてみたらさほど遠い土地ではありません。ただ、まだ同性愛者に対する理解がまったく無かった当時、意見交換を行うSNSも無い時代、新宿二丁目は肩身の狭い思いを抱えた人たちが集まる独特のコミュニティだったんですよね。いわゆる「おネエ」の方々にとって、自分が自分らしくいられる、今よりも分かりづらい聖域だったわけです。

当時、うろ覚えですが、テレビで二丁目や同性愛者がおいそれと映されることは非常に少なかったと思います。『天才たけしの元気が出るテレビ』に出演していた若干名の個性的な人を除けば、触れてはいけない存在でした。

そんな世間から見て見ぬふりをされる場所に軸足を置き、私生活での人間関係を構築します。昼間は雑誌の編集者として業界特有の厳しい人間関係を学ぶかたわらショーパブで女装姿で踊ったりトークを披露したり。時には女装の歌謡ショーの披露のために地方にドサ回りをすることもあったといいます。そうしている内、手がける雑誌や著書を通じて自身の考えに賛同してくれるファンも現れ、自身の著書を持ち寄られサインをする光景もあったとか。そうして彼女は自分が求められる居場所を見つけていったのです。

そんな折、2003年、道重さゆみモーニング娘。の6期メンバーとして加入します。

歌謡ショーでマツコは『抱いてHold on me』を踊っていました。彼女は、世に出て這い上がろうとするモーニング娘。オリジナルメンバーのことが好きです。そんな彼女にとって、宇部の田舎から出てきた道重さんを見た時には「勘違いした子ども」くらいにしか思っていなかったかもしれません。しかし、2005年、TBS『ピンポン』でコメンテーターとしてレギュラー出演したのをきっかけに、2007年には『うたばん』でタッキー&翼がゲストの回に出演しておネエ視点から面白おかしくコメントするなど、マツコがテレビの世界でチャンスを掴もうとしている頃、道重さんも自分の性格の延長線上で「勘違い」をキャラとして活かしバラエティで活躍するようになります。期せずして同じ時期にテレビタレントに挑戦する立場になるのですよね。

そして今、そんな彼女がモーニング娘。のために力を尽くしている……。

 

話を『Mステ』のコメントに戻します。

テレビの世界に外見が美しい人は沢山います。むしろテレビ局でカメラの前に立つ人はそうでない人のほうが少ない。そんな世界でコメンテーターが「他と比べて何が凄いのか」を語ることになって、「このグループのリーダーは外見が美しいんですよ~」なんてテキトーな評価はできません。

そうではなくて、マツコの言う「美しさ」とは心の成長を遂げた道重さんの内面の強さであり、役目を全うしようとする清らかさを指していると思うんです。子を持つ親であったり会社の肩書きであったり、何かを背負うことで人は強くなります。リーダーとして、先輩も同期もすべて卒業してとうとう一人になって、未来ある若いメンバーたちを背負い、過去の輝かしいモーニング娘。の歴史を背負い、それを自分の使命として受け止める覚悟を決めた一人の人間の強さをマツコは「美しい」という一言で表現したのですよね。

 

マツコもまた、コラムニストとして辛辣な意見を貫く姿勢を曲げてでも、テレビの世界で番組の演出に沿ってユーモアを交えた態度をとっていることを明言しています。これも、自分の使命に従い、求められた仕事を全うする覚悟

 

20日、TOKYO MXの情報番組「5時に夢中!」で、マツコ・デラックスTVに出ることは「魂を売る作業」であり自分は「マスメディアの犬」である、と持論を展開した。

(略)

…マツコによるとTVに出ることは「魂を売る作業」であり、見る人が増えればそれだけ魂をばらまくことになるので、恐怖を感じていたそうだ。

「『魂を売る恐怖』ってどういうかんじなんですか?」とふかわが尋ねると、ただやりたいことだけやってる訳にはいかないじゃない、TVってさ。サービスをするものじゃない?完全に自分のポリシーと違うことをやってるってことはないけど、そこは脚色したりさ、大げさにする訳じゃない?」と説明。自分のポリシーと100%合致しないことはやらないが、視聴者の要望に応えなければならないことに恐怖を感じたのだという。

マツコ・デラックス 「私はマスメディアの犬」発言の真意 - ライブドアニュース(2013.05.23記事)

ちなみに、話の勢いから「今、モー娘。すごいわよ!」の発言が飛び出したのは、それから2週間後。ガキさん勇退し、道重リーダー体制が始まってまもなくのことでした(参考: 『5時に夢中!』でのマツコ・デラックスによるモーニング娘。評(書き起こし) - テレ娘。 )

 

マツコの都会での半生、、、 

憧れの地に飛び込んだ

  ↓

団体の中での人間関係を学んだ

  ↓

自分の声に耳を傾けてくれる人ができた

  ↓

自分の居場所ができた

  ↓

自分の役目を果たす覚悟をした

 

どこか道重さゆみモーニング娘。での半生とシンクロしませんか?

 

 

道重と「愛の軍団」

 

そして、道重さんがグループに与える影響について、このように加えています。 

「彼女がひとり佇んでることによって、なかなか凄いことしてるわね この子たちっていう」

おそらくこの場面を指していると思われます。コメント撮りの時期が8月のお盆の前後と考えれば、話題を呼んだ『愛の軍団』のMVの印象がかなり強かったはず。

間奏パートの秀逸なダンスによる「動」の空気から、一転、「静」の空気でひとり佇む道重。そして彼女が率いる愛の軍団。「美しい」リーダーに従い微動だにしない他のメンバーたちから漂うただならぬ緊張感に「凄いことしてる」雰囲気を感じたのだと思います。ここはハロ!ステでいち早く観た人なら誰もがハッとさせれられた場面です。

 

思い出すのは、『One・Two・Three』のこの場面、、、

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蓮の花のお釈迦様か、あるいは『ヴィーナスの誕生』か。そんな新しい時代を示唆する抽象芸術が見て取れたのですが、同様に、とてもメッセージのある画になっています。

 

 

「カッコイイよね 分かりやすく」

 

ダンスのキレや統率のとれたチームをそのままズバリ「カッコイイ」と言い、凄いことをしていると認めてくれて、ファンとしてはただただ嬉しいばかりであったわけですが、実は重要なのはそこではありません。

 

2013年の復活劇の最初のヒットは『Help me!!』でした。なぜヒットしたか? それはMVがBuzzったことがきっかけです。では、なぜMVがBuzzったか?

はてなブックマークのコメントを2~3コ拾ってみます。

モーニング娘。 『Help me!!』 (Dance Shot Ver.) モーニング娘。 『Help me!!』 (Dance Shot Ver.)



  • モーニング娘っていまこんなことになってんだ。すごいね。」
  • 「ダンスも歌も音楽もよく分からん。動きがなんかCGプリキュア?)みたいと思うのは、夜空を見てプラネタリウムみたいって言うようなもんか」
  • 「わたしの知ってるモー娘。じゃなくなってる…!動きキレキレですごい」 

 

このDance Shot Ver.の映像で初めて現在のモーニング娘。を知ったというコメントが数多く並んでいるんですね。中には「すごい」という感情を表現するのに何という言葉をチョイスして良いか迷っている様子もうかがえます。コメントしている人は、決してアイドルや音楽や映像に詳しい人ばかりではないんですよね。とかく「すごいもの」がまとめられて転がっているネットの世界にも関わらず、知らない人さえも惹きつけたのは、やはり見てすぐに伝わる「分かりやすさ」だったと思うんです。

 

「分かりやすい」って何?

 

このMVを最初に見たのは『めざましどようび』だったと思いますが、佐野アナと皆藤キャスターが驚いていたのが印象的でした。もちろんCGのように動くメンバーたちにも驚きましたが、その状況を見てこれはイケるかもしれないと感じたのを憶えています。

なぜなら、「分かりやすい」というのはテレビの世界のプレゼンテーションの基本です。子供からおじいちゃんおばあちゃんまで老若男女が同じ映像を見る中で番組制作側の意図を伝えるためには、まったくの専門外の人であっても理解できるようフリップチャートの図形やイメージ映像やCGを駆使して誰でも分かるコンテンツ作りに落としこむ必要があるわけです。

そのテレビの中にいる人が一目見て、明らかに「これは凄い」という反応を示した。すなわちテレビ基準の分かりやすさ(=一般の人が気付くレベルの分かりやすさ)に到達している映像なのだろうという雰囲気が伝わってきたのです。

 

『Help me!!』が突出した作品なの?

高橋愛体制以降に娘。の活動を知ったという純粋にライブが好きなファンのブログで、テレビでのプロモーションを手厚くすることを意外と見る声もありました。

体制を変えて、つんく♂Pの言う「アイドリング期」から勝負の舞台を変えるからには、攻め方も変える必要があるんですよね。これまでの「つんく♂プロデュースは玄人ウケするよね」というファンの間での独りゴチた満足とは別の次元で勝負をする必要がありました。

分かりやすく若いメンバーの加入、テレビドラマ主題歌、『ピョコピョコウルトラ』のひよこ衣装、そこからのギャップでダブステップごりごりな『恋愛ハンター』、そして50曲目の節目で完全エフェクトボイスに切り替えた『One・Two・Three』……などなど、世間が想定外だと思えるような揺さぶりをかけてきました。

意外性・話題性による 「つっこまれしろ」 を設けたルアーの擬似餌を目立たせるように世間の反応をうかがい続けて徐々に注目を集め、ようやくBuzzと言える段階に達したのが『Help me!!』だったわけです。よく、花粉症は年々蓄積されていって、ある時点で飽和状態になると「気になって仕方ない」状態になると言いますが、それに近いですね。

たぶん本当は『One・Two・Three』で気付く形がキレイだったと思います。逆にピョコトラの時点だったら、今ごろ第2,第3のミニモニ。が生まれていたかもしれませんね。笑

 

ともあれ、『Help me!!』がBuzzったことで得られたのは、一つは、注目を集める「分かりやすさ」の基準がつかめたということこと、もう一つは、ダンスで世間の注目を集めることが出来るという実績でした。これにより、分かりやすくダンスが凄いグループに執着し続ける日々を過ごすことになります。

 

凄いことしてる娘。への親近感

 

近年、マツコ・デラックスや数名のおネエによるブームがやってきて、二丁目は「開かれた場所」になりました。とはいえ、おネエの世界がどんなところなのかうかがい知ることは難しいですが、以前、マツコの盟友のミッツ・マングローブが、二丁目の住民を支える深夜食堂「クイン」の名物ママのドキュメンタリー映像を見た後、こんなことを言っています。 

さっきVTR見ながら、田中みな実さんが「楽しそー」っておっしゃってたけど、二丁目で働く人たちって、その楽しそうって言われ続けなくちゃいけないってところも、仕事だからやっぱりあって、何か脳天気にヘラヘラきゃっきゃきゃっきゃやんなきゃいけないってところがあるんですけど、そういう風にずーっと毎日を過ごしてるとそれが普通になっちゃって、だんだんだんだんそれがマヒしちゃうんですよね。で、だんだん自分がどこにいるか分からなくなってきて。でもクインに行くと、「あー、二丁目に居るな!」って、二丁目に居る人たちがもう一回実感できるんですよ。

 

/TBS『サンデー・ジャポン』(2013.11.24放送)

 

努めて明るく振るまい、時に見失うこともあるが、小さなコミュニティの中で助けあって生きている心情を話していました。リアルな同性愛者の実態となるとちょっとシビアな現実があって開かれた二丁目であってもそこに注目が集まることは未だ少なく、一般的におネエは「イロモノ」「にぎやかし」として扱われます。芸能界の中でのアイドルの位置付けってそこに近いと思うんですよね。歌もダンスもドラマでの演技も、どうしても本職の真似事程度にしか受け取られず、現場の「ムードメーカー」というのが一般的な見方。ももちが重用されるのもそのためです。

しかし、そうであっても、本人たちはそれを承知の上で最大限の結果を心がけて出来る限りの努力で臨みます。とりわけここ数年は努力していることを前面に出すのではなく、ステージや出来上がったMVなど、結果で示す方向に変わってきました。もちろん、人目を引くきついダンスをこなしても 尚、楽しさを伝える笑顔は忘れない。

そんなところに、おネエからの尊敬やシンパシイが得られ、何より、目には見えない凄いことが伝わるのかなあと思いました。

 

 

ともあれ、全国に800組とも1000組とも言われるアイドルの中で、分かりやすい差別化は本当に難しく、更には個々のメンバーの個性ともなると、今や現役東大生もスポーツ選手もいるわけで、分かりやすく目立つための工夫や悩みは今後も長く続きそうです。

 

あと、マツコの「分かりやすく 凄いことやってるのよ この子たち」という言葉は、テレビの取材で訊かれた質問なので、テレビ視聴者向けの「何が凄いか」を回答しています。成人雑誌での芸能人の人となりについて語るコラムでは、テレビと求められているものが違うので、メンバーの個性をクローズアップするような別の説明をしてますよね。その辺りの使い分けの妙もマツコの器用でお見事なところだとおもいます。(参考: マツコデラックス「モー娘。は人材の宝庫でキャラが濃い」【EX大衆】 : ハロプロキャンバス )

 

 

 

「ブーム再来!」??

 

あの日、紹介VTRの冒頭に「ブーム再来!」と出た時、見ていてちょっと及び腰になる思いがしました。

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当時、夏休み中の中学生メンバーが毎日全国の地方都市で積極的な握手会活動をする中、地元のラジオに出演すると決まって出てくる会話は「はじめまして」「今は何人で活動してるんですか?」「おいくつなんですか?」「加入して何年目?」といった具合。知らない人に知ってもらうことを目的に走り続けていた最中でした。

民放テレビは広告が支える放送なので、往々にして少しゲタを履かる表現に出くわします。加入・卒業がひと山越えた新体制であることを知らない人たちにしたら、「ブーム」という単語にポカーンだったと思うんですよね。興味が無いので、たぶん中身も大して残っていない。

おそらく、このVTRに一番驚いたのは、毎日「はじめまして」と言い続けてきたメンバーたちだったのではないでしょうか。現状を肌で感じているわけですから。

 

でも、あのVTRを、半年経った今もう一度流したら……。

 

 

知られ始めたモーニング娘。'14

 

先日のヤンタンの投稿。

<「ほめてま川柳 ほめ短歌」のコーナーにて>

道重『キャラ変えた? 最近言われること多い』

さんま「何、道重、どう変えたん?」

道重「変えたつもりはないんですけど、リーダーになってから、こうなんか、なんて言うんだろう、カワイイキャラをする所が無くなったので、やっぱ」

(略)

さんま「遊びキャラじゃなくなるからな。ポジションが変わった、ということか。それはもちろん俺らの司会の時と、ボケる雛壇の時とはキャラ違いますからね。そういうもんですよね。それはカワイイカワイイ言うてられへんもんな」

 

/『ヤングタウン土曜日』(2014.04.26放送)

 

たぶん、ここらへんのお話ですね。道重さんの変化は、現場で共演する同業の人たちからの発信で伝わり始めています。

鈴木おさむ「道重さん、メンバー最年長、12年」

道重「はい、12年目に この間なりました」

鈴木「なんか道重さん、最近リーダーになってからキャラ変わらない?ちょっと」

道重「うふふふ。別にキャラ変えたってつもりはないんですけど、」

鈴木おさむ「はい」

道重「かわいいアピールする場所だったりとか、自分の性格の悪い部分を出す時が減ったっていうだけなんですよね」

譜久村「あははは」

道重「全然、根本は何にも変わってないんですよ」

鈴木おさむ「変わってないんだけど、まあしっかりしてなきゃいけない時が多くなったからね」

道重「そうなんですよ、リーダーという立場上」

鈴木おさむ「リーダーという立場でね」

 

TOKYO FM『よんぱち』(2014.01.24放送)

道重「(復活に向けての苦労を語った後) 時代に求められているアイドルになる為に頑張ろうって思ってます」

羽鳥そんなにちゃんとしてましたっけ?道重さんって」

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小山「そうなんですよね、なんか」

加藤「なんか」

一同「(笑)」

羽鳥ちょっと、一時期迷走してた時期ありましたよね?

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小山「『私かわいい』みたいな時あったよね?」

羽鳥「ありましたよね?」

道重「何かそんな時代もありましたね。まあ11年やってると色々あるんですよ」

小山「え?あれは本当の道重さんではないんですか?」

道重「いえ、あれは本当です。自分は本当はかわいいと思ってるんですけど」

小山・加藤「あはははは」

小山「思ってるは思ってる」

羽鳥「でもすごいきっちりしてる。みんなをリーダーとして引っ張っていくっていう

加藤「しっかりしてるわぁ」

 

日本テレビ未来シアター』(2014.04.18放送)

道重さんの変化と同様、フォーメーションダンスについても同じ番組で語られています。

加藤「知ってます?羽鳥さん、フォーメーションダンスって」

羽鳥知ってますよぉ。最近ホントに見るようになりましたからね

娘。一同「ありがとうございます!」

道重「うれしい」

鈴木おさむ「えー、ね、モー娘。『'14』と名前をつけて、それで、ねえ、色々かなりつらい時代もあったと思うんだけど、去年ぐらいからまた更にね」

柴田(アシスタント)「すごいですよね~」

鈴木おさむ「CD売上もそうだけどダンスフォーメーション *1 凄いよねー!もう昔とめちゃめちゃ違うもんねー! *2 」

 

ここへきて、ようやくテレビ・ラジオのレベルでも、バラエティ的な台本の中で「新しいモー娘。」や「道重の変化」をイジったら面白いという風が生まれてきているように思います。

 

マツコの解説の然るべき役割

 

思えば、3作連続1位を獲得したのは「ブーム再来!」というVTRが流れた11日後のことでした(逆に言えばそんな段階であのVTRだった)。取り巻く環境が劇的に変わり始めるのはそれよりも後のことです。

おそらく視聴者も、この半年の間に「朝のニュースでオリコン速報を見た」→「めちゃイケに出てた」→「CMに沢山出てる」→「この子たち何者?」という状態で、ようやく視聴者が「なぜ、人気なんだろう?」と気になってきた頃です。そうであれば、識者(マツコ)が「モー娘。の凄いところ」を解説するべきは、おそらく今回のタイミングだったのではないかなあって思うんですよね。

今もう一度あのVTRを流したら、「フォーメーションダンスの噂は聞いたことがある」「マツコの言ってること分かるかも」という実感を持って内容を見てもらえたのではないか。そんな、ちょっと惜しいなあという気持ちになったりしています。

 

ネットは、特定の興味ある人が能動的に情報を取得しに行くメディアです。速報をいくつかの口コミからかき集めたまとめサイトに客(ユーザー)が寄ってきます。

それに対して、テレビは、不特定多数の人が受動的に世間の話題を受け取るメディアです。であれば、ある程度の人がニュースやバラエティやCMで見かけたところで情報をまとめることで客(視聴者)への最大限の効果を与えることが出来るのではないでしょうか。

あの日は6年ぶりの出演とあって、何事かを知らしめるためにマツコのVTRがあったことは有り難いことでした。でも、モリ娘。のCGとともに歌っているからこそ、この子たちが何者なのか気にしてもらえる。そう思います。

 

ですので、ユースケが『MJ』で再会したように、どこかでマツコにお目見する機会があって欲しいものです。

 

 

願望を言っていても始まりません。来るべき時は来ました。道重さんの卒業が発表されています。これによって、二つのものがやってきます。

一つは 【期限】 です。「秋のツアーの最終日」と明言しています。マツコの言う「道重の存在が凄いモー娘。」は残り半年しかありません。

もう一つは 【チャンス】 です。卒業という最も大きな絵札を切ることで、おそらくこれまで以上にモーニング娘。'14は注目を浴びます。

 

わたし個人的な話なのですが、「もかまっちゃ」とは別のTwitterアカウントも使ってまして、道重さん卒業の一報とNHKモーニング娘。55スペシャル』(NHK総合、2014.04.28/29放送)とを経て、様々な声が聞こえてきて驚いています。

  • 「最近の曲がスッと頭に入ってこないので何とかしたい」/li>
  • 「道重以外の名前の憶え方を知りたい」
  • 「道重が卒業することで次のリーダーはクローズアップされるのかも」
  • モー娘。のEDMはK-POPほどアメリカの影響をモロに受けてはいないみたい」

 

温度感はまちまちで、いきなりハマるということではないですが、何らか頭の片隅で娘。が気になっている様子。これは凄い進歩です。一年前は、「まだやってたの?モー娘。」ですから。。

 

おそらく5期6期までは何となく知っているという世間一般の認識です。道重卒業という切り札の大きさには気付いています。つまり、これまで以上に「次はどうなる?」であったり、「今後はもういい」かもしれないですが、何らか「打てば響く」環境は整いつつあるのではないでしょうか。

 

「ブーム再来!」が現実のものであることを娘。たち自身が証明する番がやってきているのだと考えて、これからの新たな一手に期待したいと思います。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

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*1:ここで「フォーメーションダンス」を言い間違えている辺り、用意された原稿を読んでるわけではないと分かる。というか、おそらく鈴木おさむ自身が書いてるだあろうし、この放送の時点ですでに自身が担当している『Sound Room』も収録済。

*2:鈴木おさむさんは放送作家として『めちゃイケ』も『SMAP×SMAP』を担当しているので、当時のこともよくご存知。