テレ娘。

「テレビで見かけた娘。さんたち」 略して、テレ娘。 テレビ好きの目線から、画面に映った娘。さんたちについて触れます。

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ただただ楽しい…けど泣ける。モーニング娘。'16『泡沫サタデーナイト!』

ただただ楽しい…けど泣ける。モーニング娘。'16『泡沫サタデーナイト!』 - テレ娘。
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5月11日にリリースされた、モーニング娘。'16の『泡沫サタデーナイト!』は、とにかく知らない人にMVを観て曲を聴いてもらって「楽しいかどうか」を確認してもらいたい作品です。

www.youtube.com

 

漫才師が「名前だけでも憶えてもらいたいですね」というようなもので、この曲は、シンプルに モーニング娘。ってこういう雰囲気で楽しいですよ っていうグループの本質の部分を伝えられる貴重な楽曲だと思っています。

 

というのも、作者の意図がズバリそこにありました。

 

 

『泡沫サタデーナイト!』について聞かれた証言

 

4月の下旬からラジオでも流れ始めて、その際に印象に残ったいくつかコメントを別のエントリーで紹介しています。

telemusume.hatenablog.com

ここでは、この記事から抜粋します。

 

津野米咲「モーニング娘。を聴いたことがない人にとっての入り口」

作詞・作曲を務めた赤い公園の津野米咲さんのラジオで初めてフルで披露され、そこでこんな話をしていました。

ちょっとブラックミュージックがルーツの曲にはしたかったんですけど、最終的にどんどんシンプルになっていって、メロディも歌詞もとってもシンプルで、構成もシンプル

(中略)

この曲は、モーニング娘。'16を聴いたことがない人にとっての一つの入口になればいいなというような思いで書きました。シンプルであればあるほど今の12人が、なんかこう、楽しく、団体として集まった時のかわいさだったり明るさだったりが出るといいなと思って書きました。

NHK-FM「ゆうがたパラダイス 赤い公園・津野米咲のKOIKIなpop rockパラダイス」(2016.04.20放送)

 

つんく♂フリークからは一部、音の厚みが足りないといった声も聞かれましたが、それは実はその通りで、「聴いたことがない人の入り口」にするため、あえてシンプルな仕組みにしていたようです。

シンプルにすることで、誰にでも分かりやすく楽しい曲にして、そうすることで、楽しさ・かわいさ・明るさが際立つものに仕上げたということなのですね。「のこり58秒」の遊び心もキャッチーで効いています。

 

結果、どうなったか。

リリース前日のラジオでのダイノジ大谷さんの反応が面白かったです。

 

ダイノジ大谷ノブ彦「今のモー娘。楽しそう」

モーニング娘。を熱く語る大谷さんを久しぶりに見た気がします。大絶賛。

(黄金期の頃の感じを)奪還しています。と思うぐらい、超絶名曲だと思います。こんなモー娘。を待ってた!ていうか、こんなアイドルを久々に、やっぱ見たかったよねっていう。

でも、これは技術に行ったから、これをやったことで説得力を増してるんですよ。今のモー娘。って、なんかね、楽しそうなの!今のモーニング娘。って技術の高さじゃなくて「楽しそう」。ある種のアマチュアイズムみたいなのがちょっと出てるんですよ。だから、倍魅力的なんですよ。

JFN「SCHOOL NINE」(2016.05.10放送)

 

普段は楽曲の構造について語りながらアツい話に持っていく彼が、テンション高く理屈抜きに楽しそうな様子でした。

以前を知っているので「倍魅力的」という表現をしています。ダンスが揃った孤高のグループはカッコ良かったけれど、それ以上に、楽しさが伝わることで身近な親しみが魅力的に感じられるようです。

直感的に受け取れるインパクトが楽曲にあり、それがそのままグループの魅力につながっていく。

津野さんの狙い通りです。 

 

現れたクチコミの効果

それ以上に、狙いが当たっていると思えることがありました。

他分野のファンが『泡沫~』とコラボして楽しんでいることが、今回の一番大きな出来事で、ネット記事にもなりました。

加工の素材が出たのもSNSで、作品が流れていくのもSNSで、明らかにクチコミによる連動なのですよね。

こと この曲に関する話題に関しては、ネットニュースが「後追い」している気がします。記事をきっかけに広く知られたのではなく、先に拡散の輪が広がっていてそれを後から記事が見つけた格好。

ちなみに、ここ最近のシングル曲がBuzzったケースを思い出しても、ちょっと違います。

『Help me!!』と比べると、実はリリース当日時点での公式MVのはてなブックマークの数は、3分の1ぐらいなんですよね(『Help me!!』78usersで『泡沫~』は25users *1 )。なので、動画リンクが記事転載型のニュースメディアに採用される機会は少なかったはずです。

『わがまま気のまま愛のジョーク/愛の軍団』に比べるとテレビの露出が少ないですよね。残念ながら、今回『Mステ』でお披露目出来なそうです。めざましライブのようなテレビ局主導のイベントなどもありません。

それでも、公式MVの動画の再生回数が一日10万再生のペースで伸び続けて止まりません。これはクチコミの効果ですよね。

ある人が感想をつぶやいて、受け取った人がモーニング娘。を知らなくても、良いと思ったらRTなりつぶやいたりして、それがずっと伝わっていった。つまり、それだけ知らない人にも魅力が伝わったということになります。

そんな連鎖が今までになく強く見受けられ、はてなブログのトピックでも、ジャニーズファンの方のエントリーが多数見受けられました。

ゆっくり盛り上がるものほど、その後、息が長続きすると思うんです。

実のある(バブル的でない)拡散がなされているのであれば、今後すぐにはしぼまず長く愛される作品になりそうで楽しみです。

 

 

なぜか、泣ける

 

楽しさの一方で、あるキーワードが気になります。曲を聴いて「泣いた」または「泣ける」とつぶやくツイートが非常に多いんです。

 

もちろん、「香音ちゃんの卒業が寂しい」という声は多いのだけど、そうでなくて「なぜかよく分からないけど寂しい」という人も少なくないのです。

 

泡沫とは

そもそも、「泡沫(うたかた)」とは、水面にあらわれる泡のことです。

例えば海で波がざざーっと寄せる時の白い泡が、引く時にはすーっと消えてしまうように、転じて、儚いものを喩える言葉になっています。

誰でも人生に一度や二度は 楽しいけど切ない という思いをしたことがあると思うんです。憶えているか憶えてないかは別として。で、心の奥底に漠然とその思いが残ってるはずで、それが幼少期の追体験のようにこみ上げてくるような気がします。

例えば、ほんと小っちゃい頃、わたしは毎週土曜日がスゴく楽しみな子どもで、正にサタデーナイトの『全員集合』は欠かせなかったんですけど、スゴく楽しいのに、加トちゃんが「歯みがけよ!」と言い出すと途端に悲しくなったんですよね。遠ざかってく祭り囃子みたいで……。

切ない感覚は、郷愁に似た感じであるような気がします。

 

昔の想い出となると人それぞれですが、例えば、多く共感できそうなのはディズニーランドでしょうか。

 

モーニング娘。はディズニーランドみたい

※春ツアー「EMOTION IN MOTION」のセットリストについて触れています。知りたくない方は飛ばしてください。

以前、橋本愛さんが「ハロコンはディズニーランドみたい」と発言して話題になったことがあります。

先日の盛岡でのコンサートを観て、アンコール明けから終わるまで(今ツアーは特に感動的です)を見やりながら、その感覚分かるなあって思い出しました。

舞浜駅を降りてゲートをくぐり、ずっと楽しいまま丸一日を過ごした夕刻。ここからがアンコールの特別な時間と重なるのですが、シンデレラ城の前でパレードを見て揺れる思い、そのまま花火を見上げながら終える気持ち、、そんな園内での最後の時間が、コンサートの大団円のオーラスと重なって見えたんですよね。

あの瞬間って、楽しさが最高潮にもかかわらず、パレードを目で追いながら笑顔なのに泣き出したい気持ちになることがあるじゃないですか。特に子どもの頃や初めて観た時。それに近いなあと。

あの日、アンコール明けで『泡沫サタデーナイト!』が初披露され、イントロから会場全体が盛り上がりたい気持ちで充満してたんですよね。みんなが全てを出し切りたい気持ちでテンションも前のめり。

ド頭から盛り上がりっぱなしで温まり、DJ Zukkiに呼応してイエーイ!って最高潮に盛り上がる場面で、ものすごく揺さぶられるんですよね。

そして、そこからオーラスの『愛あらば IT'S ALL RIGHT』で大きな花火を見ているように香音コールもあり、やがて大団円となるわけですが、その一連の幸せな雰囲気にシビれる思いでした。

ディズニーランドのCMでも使われた表現かもしれませんが、この瞬間が永遠だったらいいのにと願うような気持ち。しかしその瞬間、心の裏側で「そうはならないんだ…」って答えも判っていて、切なく胸が詰まるのです。

 

だから、泣ける

実は、この曲でDJを務める香音ちゃんも娘。の面々も、楽しさと共存する切なさの存在に気づいています。

 
日本武道館公演(31日)でグループを卒業する鈴木香音にとっても特別な曲になった。MVではノリノリのDJ姿を披露。「ワハハと笑いながら撮影した。でも歌詞には少し切ない部分も。楽しさの裏側の切なさがわたしのハートを射止めた」

 
神戸新聞モーニング娘。'16 新曲『泡沫サタデーナイト!』 “お祭り感”踊って弾んで」(2016.05.13)

 

切なさと表裏一体だから、楽しくて泣ける。つまり泣きたい気持ちはその瞬間が楽しいのだという現れなんですよね。

だから彼女は「踊っちゃおう!」と声をかけてきます。心も体も揺さぶらせればいいじゃないかと。その後泣いたっていいじゃないかと。

今ツアーを観たファンの感想を見ると、彼女について「笑顔」への賞賛が今まで以上に圧倒的です。彼女自身が自ら楽しみ、そしてコンサートの楽しさを伝えることを集大成のテーマに掲げているように見受けられます。とにかく今すべて出し尽くそうとしてる。

そして何より、メンバーと活動できている今がとても幸せそう。

大谷氏に客観的に見えてるように、やっぱり確かに「今のモー娘。楽しそう!」なんですよ。MVで奔放に過ごす12人は実に魅力的に映り、今日の全国握手会イベントで切り取られた風景には、いずれも心踊る豊かな表情が並びます。

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全国握手会当日のツイート:Twitter検索 - from:morningmusumemg since:2016-05-13_22:00:00_GMT until:2016-05-14_13:51:00_GMT

 

それは、もしかしたら、残り十数日が泡沫の時間であるのだとを意識しているからかもしれない。香音ちゃんだけでなく、12人が今の時間を大切にしようとしている。

そして見てるこちら側も意識してるので、より一層そんな風に見えるのかもしれない。

幸せな12人の日々が、刻一刻とカウントダウンしていきます。コンサートの中で、あと少しで終わってしまうというカウントダウンの時がやってきます。それを示唆するように、この曲があと58秒で終わってしまうとカウントダウンを始めると、途端にキュンと切なさが乗っかってくる……。

終わればすべて過去のものになってしまう。今この場所があまりにも楽しく幸せで、もしも叶うなら終わってなんて欲しくない。でも、そんな切なる願いはきっとやっぱり叶わない。だからもう、どうにでもなれとばかりに、今を楽しもうとなりふり構わず目の前のことに力を尽くしてみる。楽しければそれでいい。

その時、楽しさの中で、気持ちが右に左に揺さぶられて心に小さな隙間が生まれる。そこに裏側の切ない気持ちが忍び込んでくるんです。

だから、泣けるんだと思います。 

 

 

あとのことは忘れて「今を楽しむ」ということ。

この楽曲と今の12人とに共通する大きなテーマである気がします。

彼女たちが泡沫の今を楽しんでいるように、この楽曲も後先考えず、歌詞のメッセージの通り気持ちに正直に、夢中で楽しむのが一番なのだと思います。

この楽曲は「楽しい」。それがすべて。それでいい。

切なさやら本当の気持ちやらという行間の部分は個々で受け止めて、みんなでいる時は細かいことは忘れて、そうして今を楽しめば楽しむほど、きっと未来の11人と1人に大きな力をもたらす。

そんな目には見えない泡沫の宝物を記憶の中で分かち合えることが出来たらいいと思います。彼女たちも、わたしたちファンも。

 

 ◆ ◆ ◆

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「たぶん…泣いちゃいますね。こんだけ私のことをイジってくれるみんながいるので、やっぱこんないいメンバーとお別れしなきゃいけないのが寂しいので」

そんな気持ちを笑顔で語る。

 

 

 

 

*1:『Help me!!』はリリース日当日に78users。モーニング娘。 『Help me!!』 (Dance Shot Ver.) モーニング娘。 『Help me!!』 (Dance Shot Ver.) それに対して、『泡沫サタデーナイト!』は25users。モーニング娘。'16『泡沫サタデーナイト!』(Morning Musume。'16[Ephemeral Saturday Night]) (Promotion Edit) モーニング娘。'16『泡沫サタデーナイト!』(Morning Musume。'16[Ephemeral Saturday Night]) (Promotion Edit)